[ 飯田リニア通信: 2017/03/02 ]
平成28年(行ウ)第211号
原告 川村晃生 外 737名
被告 国(処分行政庁 国土交通大臣)
参加人 東海旅客鉄道株式会社
東京地方裁判所民事第3部B②係り 御中
意見陳述書
2017年2月24日
原告 和田悦子
原告和田悦子が意見陳述します。
私は岐阜県土岐市泉が丘町に居住しております。 12年前に隣市、瑞浪市日吉町の古民家を手に入れました。自然豊かなこの土地で農業をして余生を過ごしたいと思いゴツゴツと手作りでリフォームをしております。ところがその北西約300メートルの南垣外地区の地下にJR東海のリニア中央新幹線と非常口が建設されるということを聞き、とても驚き圭しか。自然を壊してまで、東京名古屋間を40分で走るそんな早い乗り物を作る価値がどこにあるのか私にはわかりません。
この地域は大小のウラン鉱床が点在しています。「春日井リニアを問う会」が2016年2月と3月に、3回にわたり東濃ウラン鉱床周辺の「放射線量調査」を行った結果、「リニアルート品川から245キロ地点の(御嵩町)で非常に高い測定値が認められました。
私の古民家の近くにも宿洞ウラン鉱床がありますので、近辺の「放射線量」を測ってみました。地上から1mの所で平均毎時0.13~0.15マイクロシーベルトもありました。日によって計測値は変わりますが、他地区より高い数値ですので、地下深くを掘削すれば、放射線量の高いウラン残上が排出されるのではないかと危惧しております。
JR東海はリニアの路線を設定するにあたって、「ウラン鉱床を回避した」と準備書には書いていました。しかし、それはJR東海自身がウランの有無を調査しかものによるのではなく、既存の文献を参考にして作り上げた路線計画であることがわかりました。その文献は独立行政法人日本原子力研究開発機構(旧勣燃)のものであります。あるジャーナリストがその日本原子力開発機構の職員にウランの有無を問いただしたところ「実際には掘ってみないことにはわからない」と答えたということです。私はその職員の言われた通りだと思います。文献上でウラン鉱床を回避したと言われても、実際にはウランを含んだ残上が出てくる危険があると思います。
東濃地区のリニア問題を取り組んでいる団体「リニアを考える岐阜県民ネットワーク」が、JR東海に対して、2015年10月と2016年4月に、岐阜県内のルートエのウランの存在を確かめるためのボーリング調査をするように要請しました。それに対して、JR東海は「花岡岩による天然由来の放射能数値であり問題ない」と回答をしました。岐阜県はJR東海に対して、「事業者として、独自でウラン鉱床の有無を調べる責任かおるのではないか」との意見を出しました。それに対してJR東海は、2016年7月25日に、瑞浪市日吉町の3キロ区間付近で、僅か11本のボーリング調査を行っただけです。また、JR東海の評価書において、「万一、放射線量が比較的高い掘削上が確認された場合は、掘削上を覆土することにより敷地境界線における放射線量を管理値以下に低減させるとともに、遮水シートなどを用いて雨水などの侵入を防止させることとする」としています。驚きました。覆土や遮水シートを使うなど、そんな安易な方法しか対策をもっていないのでしょうか。ウランを掘削してしまえば、ラドンガスが発生します。ラドンガスは肺ガンを引き起こす一因になりうることが確認されています。
地中にはこのほかにもカドニウム、水銀、亜鉛なども出土する可能性があります。2003年には東海環状線自動車道工事の掘削工事において、隣接している可児市久々利地区で黄鉄鉱という重金属が出土し、近隣の米農家は当時、耕作をやめなければいけない事態となりました。
つい、今年の2月初めには、リニア日吉トンネル南垣外工区の工事で環境基準の4.2倍のヒ素と1.9倍のフツ素、1.4倍のホウ素が検出されたと報道されました。
地元市民は大きな不安を抱えています。今後、どんな計測器で、どのようなプロセスを経て土壌の測定をしているのかを説明してぼしい。また、市民による測定や見学もさせてほしいと要望しています。
また、またこのヒ素などの問題に続いて、2月8日の新聞では、本件工事の施工業者が土砂災害のおそれのある区域で無許可で工事を行っていたことがわかり、岐阜県は業者に文書で是正を指導したことが報道されました。無許可であることを認識していたとのこと。許せない行為です。JR東海は市民の不安を払拭するべく情報公開をし、最善を尽くしてほしいと思います。
加えて、井戸水が枯れた場合の補償に関してもJR東海から具体的な回答はありません。井戸は田舎で暮らす者にとってはお金には替えられない大切なものです。
そもそも、JR東海は一企業の事業だと公言しておりました。「ペイできない」とも言っていましたので、おかしいとは思っていましたが、国から3兆円の融資を受けるようです。今後、何か事があった時は、福島原発事故対策費用やもんじゆ廃炉の多大な経費と同じように、結局、国民がツケを背負っていくことになるのでしょうか。
私たち人間は、衣食住すべての面で、大地の恵みを受けています。今では宅地は自分の物のように思っていますが、昔は、決まった所有者は無く、自分かこの世にいる間、大地の神様より借りているものと考えられ「地の神様」を祀ったそうです。私は地中を深く掘り起こし、勝手に自然破壊することは神様の怒りに触れるのではないかと正直思っています。
自然を壊すことは、人間をも壊していくことにつながります。本当の豊かさは自然環境をどれだけ残していけるかであると私は思います。脚本家の倉本聡さんは「日本は敗戦からただひたすら走ってきた。ブレーキもバックギアもなく、ゴールのないマラソンを欲望のままに走っているのではないか。哲学がなく、無反省な進歩をしている」と今の日本を心配しています。
私達は未来を生きる子供たちのため、ブレーキをかけ、今後日本がどうあるべきかを真剣に考えなければいけない時が来ていると思います。このJR東海の見切り発車ともいえるリニア中央新幹線工事も一度立ち止まっていただきたいと思い、意見をのべさせていただきました。以上です。