飯田リニア通信 No.9                      2014.4

第3回 飯田リニア学習会行なわれる

 第3回飯田リニア学習会は、3月2日(日)午後1時~4時30分、飯田文化会館で開かれ、165余名の人々が参加されました。橋山禮治郎氏の講演「リニア計画の行方」が行なわれ、氏はリニア計画は失敗するものであり、早く止めさせるべきであると強調しました。その後のシンポジウムでは、河本明代氏がコーディネイターを務め、パネリストの松島信幸、曽我逸郎、酒井和美、山根沙姫氏が、リニア計画の様々な面を話題にして問題提起をしました。その後の質疑応答、意見発表では多くの発言があり、リニア計画の様々な問題点が浮き上がりました。

 「地下水が涸れるのではないか」「トンネルの残土問題」「工事の際の騒音問題」「生活用水への影響」「景観の破壊」「貴重生物への影響」等々、多くの問題点が指摘されました。また、「こういう会で色々の発言をしているだけでは効果がない。裁判闘争を行なう必要がある」という意見も出されました。

 今後、リニア問題をどのように扱ってゆくのか、どのように運動を進めてゆくのか、難しいことだと痛感しました。飯田下伊那地区の住民だけの問題ではなく、沿線住民全ての問題だと思います。それらの人々と連携して、リニア問題を考えてゆく必要があると思います。

県庁へ行き、リニア問題を関係職員と話し合う

 3月11日、久保田雄大さん始め飯田上下伊那住民24名が、県庁を訪れ、リニア担当の4名の職員と11時から12時40分まで、様々な問題を話し合いました。

 先ず、久保田雄大さんから、3月2日の会で出された意見の大要が話され、その後、環境影響評価意見書、コミューニケイション、情報公開と評価、について話が進み、参加者の殆どが意見を述べました。4人の職員は丁寧に対応下さったのですが、私達には腹の底から納得がゆかないものがあり、リニア計画の再考を実現させるのには、かなり強力な取り組みをやらなければならないと痛感しました。久保田さんから知事に、3月2日の会の 様子を撮影したDVDが贈られました。

新刊書紹介  橋山禮治郎著『リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」』 集英社新書(720円十税)

連絡先:飯田市高羽町3-4-9電話0265-24-5604「細リニアを考える会」代表 片桐晴夫

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リニア中央新幹線計画と原子力発電

片桐晴夫(飯田市在住)

 リニア中央新幹線と原子力発電は、その根に於いて共通点が見られる。それは、JR東海会社と東京電力会社はじめ幾つかの電力会社が深く関わっており、何れも国民の真意を無視した視点で進められでいるということである。

 前者に関しては、JR東海は、この新幹線を建設する目的は、東京・名古屋・大阪という巨大都市が結ばれることによって、更に巨大な都市が生まれ、それにより日本の経済活動が活性化してわが国に莫大な利益が齎らされると言っている。後者では、自然エネルギ一に変わる原子ネルギーにより電力の供給が容易になり、日本の産業はじめ国民生活に大いなる利益を齎すとのことである。

 両者の主張は一見すれば、結構なことである。しかし、深く考えて頂きたい共通点は何だろうか。色々あるが、最たるものは、大自然を破壊し、国民の生活に負の遺産を残すことではないだろうか。前者は、赤石山脈(南アルプス並び伊那山脈)そして、恵那山系にトンネルを穿ち、美濃の貴重な植物地帯を貫き、日本最大のウラン鉱床地域を通過するのだ。大自然は地球が何億年という長い間に形成してきたもので、これに傷を刻むことは、人類の行為の中で実に悲しいことではないだろうか。

 ここ伊那谷に関して言えることは、長い年月かけて人々が形成してきた田園と集落を無惨にも一直線に傷をつけることである。

 また、残土運搬のダンプカーが毎日引っ切りなしに通り、残土を何処かへ捨てることである。住民の平穏な日常生活は乱されてしまう。

 また、地下水に大いなる変化が生じ、井戸は涸れ、住民の生括に大いなる支障が出てくることである。

 その他、いろいろなことが考えられる。人間の手で大自然を破壊することは、何時の日にか必ず復讐を受けることを予想すべきである。

 原発の問題も、福島県のそれの破壊によって、悪影響が生じて、これらを解決することは不可能とまで言えるのではないだろうか。

 人間の「文明の利器への過剰な信頼」が、結局人間を不幸にしているのだ。私たちは、二十一世紀の人間の進むべき正しい道を真剣に考えなければならないのである。それは、過去を深く反省し、人類の真の幸せとは何かを真剣になって模索しなければならないと思う。殊に、日本は地震国、火山国ということを深く頭に入れておかなければならない。

 「旧約聖書」の「バベルの塔」の物語は、今、そして、将来の日本を考える上で大いに参考になるのではないだろうか。人間の思い上りが私たちを破滅に導くということを常に頭に入れて置く必要があると思われるのだが。皆様は如何に考えられるのでしょうか。

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リニア反対運動より「伊那谷大好き!」の声を全国へ

山根沙姫(大鹿の↓00年先を育む会)

 JR東海が計画するリニア中央新幹線が、私たちの住む大鹿村の大自然を突っ切るルート「Cルート」に確定したのが2010年秋。私たちは新聞で「Cルート確定」と知りました。地元が「新聞で知らされる」という異常な事態。「何が起っているのかわからないまま、ことが進んでいく。住民の声が届かない。JR東海のやりかたが許せない。ただ反対の声を広げるのではなく、村民へ呼びかけ、情報を共有し、ひとりひとりがリニアと向き合い、考えるきっかけをつくりたい。」そういう思いから「大鹿の100年先を育む会」が発足されました。2010年11月のことです。

 リニア学習会開催、山梨県実験線視察、村民へのアンケートの実施、リニア新聞の発行・・・など、会としては「中立」の立場で活動を広げてきました。「立場があって表立つて意見を言えない」「何が起きているのかわからない」「国や村には逆らえない」公の場でリニアの話をするのはタブーのような雰囲気の時もありました。人口1000人ちょっとの村。意見の相違による対立や分断だけは避けたい気持ちが強くありました。

 昨年秋に「環境影響評価準備書」が公開され、それに伴い村でもJR東海による説明会が開かれました。やっと浮き彫りになってきた生活への直接的な影響に、今まで無関心だったり発言を避けてきた村民も声を上げ始めました。PTAの集まりでも、リニアのことが話題に上るようになりました。届いてくるのは「よくわからんけど、迷惑な話だな」という声。町へ出る主要道路にダンプが1700台?! うちの水への影響はないの??? 迫りくるリニア問題は、私たちの生活を否応なく暗くしています。溢れるエネルギーがもったいない!!行きづまり、負のエネルギーに負けてしまったら何も生まれません。明るい未来を提示していくことが、問題の解決の糸口になるのではと、楽観的に考えています

 「大鹿の100年先を育む会」では、ただいま、「アートでリニアをとめちゃう?!キャンペーン」を行なっています。会員各自がそれぞれの表現方法でリニアや大鹿への思いを形にしています。より多くの人にこの問題を認識してもらうことが狙いです。

 「大鹿大好き!伊那谷大好き!活動」を地道につないでゆきたいと思っています。

 難しいことを考えなくとも、山で暮らし移りゆく四季の中に身をゆだねると、自ずと感じられるものがあります。水がどこからくるのか、どこへいくのか。太陽のありがたさ、風のありがたさ。月が満ちて、そして、欠けて、雨に喜び、土に触れて。「山に生かされている」と感じられる贅沢な日常。押し付けるわけではなく、一人一人が自分を取り巻く環境に少し注目してそのつながりの中に自分もいるんだ、と感じるだけでいい。「自分の問題」になった時、湧き出る感情や進むべき道、臨む未来が見えてくるのだと思います。失いたくない風景がある。心の拠り所のお気に入りの場所がある。きっとどんな人も。その場所を思い浮かべて欲しいと思います。そして、考えて欲しい。

 「それでも、私たちの未来にリニア新幹線は必要だろうか」と。


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ひらく・はなす・つながる

久保田雄大(中川村在住)

リニアトークフェスからの一歩

 僕らのふるさと伊那谷の未来にデガすぎるインパクトのあるリニア話。ところが「リニアのことって、すごく話しにくいっす!」というのが、地元の若者達の率直な声。「反対してるやつと思われたら仕事がこなくなるんじや…」という恐れ。「もう決まっちゃたことなんでしよ」という諦め。「よくわからない、ワクワクしない」からくる無関心。「地域は自分達の手でつくるもんだに」という伊那谷が育んで来た伝統はどこにいっちゃうのか。ふるさとの自然を失うこともヤバいが、ふるさとに対するみんなの気持ちが失われることはもっとサミシイ。

 「そんな今の状況、みんなでなんとかしようよ」という想いから、3月2日のリニアシンポジウムと同時に「リニアトークフェス」を開催させていただきました。テーマは【ひらく・はなす・つながる】。若者、子育て中のママ達のトーク。心をこめて作った野菜や食べ物の出店。想いを歌や絵で表現。会場に来れない方たちへも、ネットテレビ(inadani.tv)で動画中継させていただきました。今のままの暮らし方では、地球はもたない。政治や経済の目的も「奪い合う」から「わかちあう」へ。その一歩目は、自分を開いて、話し愛、認め愛。どこにいても、どんな立場にいても、それこそいま、必要なんだ。そんな原点を感じたフェスでした。

3月11日 県庁ヘ

 フェスに関わった24名で県庁を訪問しました。メッセージは、1) 3月中に県知事がJRに提出する環境影響評価意見書の作成前に、伊那谷の若者達、子育て中のママ達の声を直接県庁に届け、意見書に反映してほしい。2)リニア問題について、住民・行政・JRのコミュニケーション、および情報の質が乏しい現状を把握していただき、今後はもっと住民と県の対話をしていきたい。県庁の環境政策課とリニア振興室の課長ら4名に対応していただきました。3月2日のフェスで語られた意見をDVDとフラッグにし、知事に贈りました。

 県も住民も、このまま進むのは危機感があるのは同じ。私たちは県の対応を非難しに来たのではなく「現状を解決するにはお互いなにをすればいいのか、一緒に話し合いにきた」というスタンスでの対話でした。なかなか伝わったのではないかと感じています。マスコミにも注目していただき、自分達としても勇気が要る「大胆な行動」でしたが、若者が政治ばなれしている現状の中、こういった関わり自体が、ポジテイプなんだと感じました。シンポジウム・フェスでの収益・カンパの一部を、DVD制作費と交通費に充てさせていただきました。みなさんありがとうございま、した。

これから

 3月20日に出された長野県知事の意見書には、地元の意見が反映され、工事計画の見直し要求も含まれました。JRはまだ、2014年中の着工を目指しています。

 ふるさとの未来にとって大切な局面が続きます。沿線各県からのの「意見書」を受け、JRが「評価書」現在作成中。それに対し、国交省、環境省はどう対応するか。地元では、市町村とJRがそれぞれ結ぶ「環境協定」の話もあります。夏までに、各地の住民グループが自治体とコミュニケーションをとり、協定に関して意見だしやサポートをしていく、という動きが必要だと思っています。そしてそれをサポートする伊那谷全体の市民のまとまりも。

 「リニアが出来たらどう発展に結びつけるか」という話よりも「今はまず、自然や文化をどう守っていくかという話を、住民と行政と一緒になってするとき」というムードが創られたらいいなと感じています。そして、リニアあるなしに関わらず「地域の未来を自分達がつくる」という気持ちがもっと広がればいいな!

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