飯田リニア通信 No.8 2014.1
リニア計画の再考を求める
小林俊夫(大鹿村大河原在住)
10月(2013年)14日、大鹿村で行なわれたリニア建設計画の環境影響評価準備書の説明会は、質問者が多数居たにも拘らず打切られ、野次と怒号のうちに閉会した。
全日程終了後、内田吉彦環境保全統括部長は、記者のインタビューに答えて「十分に説明が出来た」と言って自信を示したが、一連の会開催は着工へ向けた単なる通過儀礼に過ぎなく、長野県内最大の被害者である私たち大鹿村村民は全てを理解し納得した訳ではなかった。反って、より多くの疑問点が増加した結果に終わった。
新飯田駅の位置も正確に決まらず、概要で示されたような準備書では当該住民は将来設計もままならず、不安な日々を過ごしていかなければならないのである。
最大受益者である飯田市は、沿線住民の声に応えてJR東海に私達の代弁や抗議をすべきである。なぜリニアが必要か、そもそもの原点が十分に説明されず、私達は理解に苦しんでいる。また国土交通省で行なったパブリックコメントでも、圧倒的多数の反対意見を無視して計画を進めてきた。
リニア計画が急浮上してきた理由は、ジェット機の影響で東海道新幹線の乗車率が低下したことに始まると言われている。JR東海はその対策として、リニアの必要性を打ち出したに過ぎないのではないか。
中国では、鉄道の新幹線方式での走行試験で時速486キロを出し、その実用化も近いと言われている時代である。リニアでは互換性もなく、故に発展性も乏しい。むしろ、日本の社会をミスリードする結果にならないか。
私達が最も疑問視するのは、JR東海の住民に対する居丈高な姿勢と自然環境に対する配慮の無さである。大鹿村で生息している「ミソゴイ」に対しても「生息環境に影響はないと思われる」と自社の利益に都合よく説明し、建設を強行しようとしている。
民間企業のトヨタ自動車株式会社では、こうした生物の保護活動を積極的に支援している。一方、公益企業たるJR東海の生物に対しても人間に対しても思いやりを欠いた姿勢は厳しく問われなければならない。
「リニアの電源は現在の電気で賄える。原発の電気は使わない」とJR東海は言明しているが、葛西会長ら経営陣は原発推進、再稼働に積極的である。
しかし、現実に余剰の電力は何処にあるのか。各電力会社の再稼働申請と無関係ではあるまい。電源、建設費、電磁波、安全対策、自然や生活環境への影響など、本質的な問題にまともに答えているとはとても思えない。
リニア計画は、次世代にも大きな負担を強いるものであることから、本事業を管轄する太田国土交通大臣の現地視察と、事業の再考を強く求めるものである。
リニア中央新幹線の採算性に大疑問
酒井和美(飯田市鼎在住)
リニア中央新幹線の事業計画で最も重要なことは、採算が採れるか否かであると思う。巨額な設備資金を投じて、自然環境に多大な負荷を与えたあげくに、運賃が高くて利用者が少ない、結果的に大赤字で、税金を投入して、運行せざるを得なくなることは絶対にないのか。採算割れになった場合、一体誰が責任をとるのか。
マスコミによれば、リニアモーターカーは、既存新幹線の3倍以上の電力を費やすという。そもそも、JR東海はリニアの燃費に関する資料、情報を公表していない。大深度地下トンネルと南アルプスを通過するトンネルで86%、地上部も高架橋であり、従来の線路のように大地に鉄路を敷設するのに比べて膨大な工事費が予想される。
燃費の悪さと工事費の大きさの2点だけでも、その運賃が安くなるはずがない。推進派の評論家や、JR東海は既存新幹線運賃+700円とマスコミに伝えさせている。JR東海の資料では、飛行機の燃費に比べ3分の1だから効率が良いと記述されている。この2点を言い続けるならば、ほとんど詐欺師と言わざるを得ない。
リニア完成後、運賃が高くて利用者に敬遠されて採算割れになり大赤字になった場合、赤字の責任を誰が取るのか。マスコミによれば、JR東海の社長山田佳臣氏は、「リニアはペイしない」と発言したと伝えられている。ペイしないということは、採算割れ、赤字必至ということではないのか。
リニアが国民にとって必要欠くべからざる有用な交通機関であるならば、多少の自然破壊もやむを得ないが、赤字必至の鉄道のため、南アルプスの大自然が破壊されることを看過することはできない。一度失われた自然環境は永遠に取り戻すことはできない。
この赤字鉄道に税金投入になった場合、子孫に「負の遺産」を残すことになる。長野県は、リニア事業の採算性を県独自に精査して、この事業の優劣を公表すべきである。JR東海の言う採算性を鵜呑みにして、この事業の遂行に加担するならば、事業失敗の際にはJR東海と共に共同責任があり、連帯責任を取るべきである。その責任をどう取るかを県民に明示すべきである。民間会社JR東海が計画実行する事業だから、その採算性に疑問を挟む余地はないなどと言うことは絶対に許されない。過去の説明会の折、採算性の質問に対して、JR東海は堅実な事業であり、株主に安定配当が可能であると答えているが、まともな事業計画が公表されたことはない。
JR東海は、次のことを国民に約束して欲しい。
もし、赤字になった場合、
(1) 私財を投げ打ってでも、その補填をする。
(2) 決して、国民の税金で尻拭いをしない。
そして、
(3) 金銭的にその責任を担保するため、リニア開発社債を発行して、設備資金を賄う。
リニアを推進する関係者は社債を買う。
「飯田リニアを考える会」活動報告
2014年1月
「飯田リニアを考える会」(会員約50名)は、2010年4月に発足し、今日まで活動を続けて参りました。主な活動は次の通りです。
1.毎月隔週2回の事務局会(10名)
飯田市内で開き、リニアに関した様々なことを話し合いご研究し、学習しております。
2.学習会
第1回 2010年11月7日(日) 飯田市「さんとぴあ飯田」にて。講演、他。
講演者 橋山禮治郎、川村晃生、荻野晃也氏 150名参加。
第2回 2011年2月27日(日) 飯田市丸山公民館にて。講演、地元報告、他。
講演者 川村晃生氏、報告者 松島信幸氏、意見交換。
第3回 2014年3月2日(日)午後開催予定。会場は飯田文化会
調講演を橋山禮治郎氏、パネルディスカッションを行なう予定。
3.アンケート
2011年7月、飯田市と下伊那郡の各首長、議員、商工会長、国会県会議員への公開アンケートを実施。209名へ20の質問を出す。回収率35.8%。報道機関による会見。
4.「飯田リニア通信」の発行。2012年3月、6月、9月、12月、2013年4月、9月、11月。 2014年1月発行予定。3000部刷って、飯田下伊那地方に配布。
5.地域の反原発集会に参加し、「原発とリニアの根は同じで、深い関係がある」を話し、リニアの問題点を訴える。
6.「大鹿の100年先を育む会」有志と提携して、リニア問題を考え行動する。
7.「リニア沿線住民ネットワーク」と提携して、集会(長野市、東京、神奈川、甲府、名古屋、静岡、中津川、国会)に参加している。
第3回「飯田リニア学習会」へのご案内
一一再考すべき「リニア新幹線計画」 講演とシンポジウム一一
主催:飯田リニア学習会実行委員会
いよいよ新年の幕が開きました。「飯田リニアを考える会」では、2010年11月7日、2011年2月27日の会に続いて、下記の予定で、第3回「飯田リニア学習会」を開きたいと思います。是非多数の方々がご参加下さいますようご案内申し上げます。
1.日時:3月2日(日)午後1時~4時30分
2.会場:飯田文化会館(飯田市高羽町)2階会議室
3.内容:基調講演 「リニア計画の行方」(45分間)
講師 橋山禮治郎氏(千葉商科大学大学院客員教授、アラバマ大学名誉教授)
シンポジウム(50分間)
パネリスト 松島信幸氏、酒井和美氏、曽我逸郎氏、山根沙姫氏
コーディネイター 河本明代氏
質疑応答(50分間)
4.参加費:500円
5.連絡先:片桐晴夫(飯田市高羽町3-4-9 電話 0265-24-5604)
※ 上の連絡先は発行当時のものです。ご意見などは現在の連絡先にお願いします。