飯田リニア通信 No.4 2012年12月20日
南海トラフ巨大地震とリニア新幹線・浜岡原発
1. 大地動乱と浜岡原発
国の2つの有識者会議は、南海トラフ地震 M9.1が発生した場合、最悪32万人が死亡する被害想定を発表した。南海トラフ地震は、2030年~2050年に発生する可能性があると考えられている。20年~40年後に、大地の動乱期が再来する。
この時の地震断層は、御前崎沖の駿河トラフから赤石山地南部の赤石岳・荒川岳付近の地下約30数キロまで破壊がおよぶであろう。浜岡原発は、地震発生の約5分後に高さ 19m の津波に襲われるだろうと予想されているが、重大な問題は、津波より先に原子炉自体がやられてしまうことである。地震と同時に2~3m 跳ね上がる。この時、原子炉建屋内がどうなるか冷静に判断すべきである。圧力容器と格納容器が建屋とともに跳ね上がった時、これらと連結している4系統の細管がどこかで破断してしまえば。非常用炉心冷却システムが作動できなくなる。津波より非常システムの破断のほうが命取りこなるのではないのか。
2. 南海トラフ巨大地震とは
南海トラフ地震の発生には2つのタイプがある。巨大地震とされるのは南海トラフ東部の東海地震、中部の東南海地震、南部の南海地震が同時に起きる夕イプ。一方、各地区での地震が時間差をおいて発生するタイプは巨大地震にはならない。近い将来、東海・東南海・南海とさらに西に続ぐ日向灘までが一気に連動することが想定されたのが、今回死者32万人と予想された南海トラフ超巨大地震である。
3. リニア新幹線と浜岡原発
昨年の震災の後、浜岡原発は稼働停止している。浜岡原発の再稼働に関達して、JR東海会長葛西敬之氏は、産経新聞(2012.5.19)で次のように語っている。「日本経済の活力は、製造業の競争力にある。(中略)競争力は、電力の安定供給にかかっている。そして、原発を最大限活用する以外には、高品質な電力をリーズナブルな価格で安定的に供給することは不可能である。(中略)自然エネルギーなど原子力の代替が可能だという幻想をふりまいているうちに、表層民意は脱原発から反原発へと自己成長した」
リニア新幹線をまかなう電力源は、浜岡原発・柏崎刈羽原発が見込まれてい る。
4. リニア新幹線計画ルートは危険だ
南海トラフは御前崎沖・駿河湾から北上して富士川沿いに北へ向かい、甲府盆地の南部へとのびている。このあたりの南海トラフ地震による被害は震度7と推定されている。ニア新幹線の計画ルー卜は、盆地域で地震動が最も激しいと予想される地域に計画されている。
JR東海は、早川町新倉地区で糸魚川―静岡構造線を貫いて試掘トンネルを掘っている。同構造線の新倉露頭は国指定天然記念物として知られるが、これが2011年秋の豪雨で崩れた。崩れたのは、断層上盤側の粘板岩帯である。
「土木技術は自然を征する」などの言葉は傲慢だ。山岳トンネルの難しさとして筆頭に上がるものに山体圧力がある。リニアのルートでは赤石山地主稜線で最も標高が低くなる大日影岳付近を掘り抜く計画だ。トンネルは、山頂から千数百メートル下を掘り進める予定である。トンネル内に加わる圧力は、山頂までの山が持つ岩石の重さにあたる。トンネルがつぶれないのは、断面形がほぼ円形だからである。断面が円いと山体圧力が上下左右から打ち消し合って働くからである。しかし、断層が密集したり岩石が激しくもみ砕かれている擾乱帯(じょうらんたい)においては、地下構造物に加わるゆがみが蓄積していけば、トンネルといえども塑性変形(そせいへんけい)してしまう。赤石山地にはこの擾乱帯がいく筋も並走している。
5. 最大に危険な中央構造線
大鹿村の青木川が流れる中央構造線の谷を横断して、Cルートが計画されている。中央構造線は最短で横切るから安全であるとJR東海は説明している。これは、中央構造線が動かないという前提あっての話である。勣けばトンネルが切断されてしまう。中央構造線は動かないという証拠はない。大鹿村全体の集落は、全て地滑り斜面上にあって、そこには弥生時代の遺物は皆無である。常に動き、崩れているためである。714年、1718年の中央構造線地震が知られている。
6. 終章 南海トラフ地震時にどうなるか
近い将来に起きる南海トラフ地震(東海地震・東南海地震)に対して、東海道新幹線は、致命的な損傷を受けるだろう。この時、リニア新幹線は、バイパス線として重要な役割をはたすだろうと、JTR東海は言っている。このような甘い認識はあり得ない。南海トラフ地震が発生すれば、計画されているリニアルートも甚大な被害を受ける。地震が発生した場合には、高感度地震予知システムが働いて、列車を止めるから大丈夫だと言うだろうが、こうした甘い期待が許されるだろうか。時速500㎞で走っていた時、火の玉として萌える地獄絵を思い描いてほしい。
(松島信幸 記)
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