飯田リニア「通信」No.3                   2012年9月20日

伊那谷自然友の会会員 浅野清志

地下水は大丈夫?

 リニア新幹線が飯田付近を通る予定になり、大規模な工事が行われそうです。経済効果が期待されています力八地下水は大丈夫でしょうか。

1.各地で起きている地下水の問題

 安曇野では、地下水が減少・水源の保護が課題になっている。それでも、大規模な開発・揚水が計画されていて、歯止めがかからない。

2.地下水(湧き水)は重要な資源

 「飲料水は公共水道があるから、心配は要らない」「地下水は不要なもの」と思い込んでいませんか?

 確かに飯田市など、この地域の水道水は質が良く美味しい水です。

 でも、名水100選に選ばれている猿庫の泉や観音霊水をはじめ、これに負けない美味しい地下水が、この地域にはたくさんあります。

 また、地下水は観光資源、飲料水・生活用水、農業を支える水、工業用水などとして、とても重要な役割をもっています。

 私がこの地域で地下水調査を行ってきた結果をもとに、上郷地区・座光寺地区の地下水について紹介します。

 調査を行ってきた立場からは、大規模な工事が行われた場合には地下水に大きな影響が出るのではないかと心配しています。

3.地下水の流れ

 ○地形に沿った流れで北西から南東へ流れている。(図1)

 上流側になる場所で地下水が減少すれば、当然下流となる場所へも影響が出ます。揚水や出水が起きた付近だけの影響ではすまない可能性があります。

 ○河川からの流入は少ない。また野底山など山からの流れは少ない。

 ○地下水の水源となっている涵養域は上段の畑や水田の効果が大きい。

 ○地下水の量は、河川工事・宅地化などにより、減少してきている。

 これから少し減るだけでも大きな影響になることが考えられる。

4.大規模な揚水・トンネルへの出水は地下水量に影響が出る。(図2)

 地下水の汲み上げ・トンネルなどへの出水は地下水の量が減少し、地下水位が低下する。地下水位の低下や範囲が大きければ、近くで井戸涸れ・湧水が出なくなる、などの影響が出る。水田地域などで地下水位が低下すれば、農業用水が多く必要になる。

 工事による地下水位の減少量・影響の範囲は、出水の量や周辺の地層の水理的な調査をきちんとしなければ分からない。

 調査が行われる2ヶ所だけでなく、扇状地でも複数の場所で調査を行い、影響の大きさを見極める必要があると思う。

5.上郷地区にある井戸の地下水位(表1)

表1 地下水面までの深さ (上郷地区)
深さ (m)井戸数
09
0~29
2~413
4~66
6~85
8~101
10以上2

 水面までが浅い井戸が多い。ボーリングをした井戸でも同じ傾向。

 地下水が流れにくいために、浅い場所で仁水が溜まっている。逆にいえば、上郷地区を流れている地下水の量は少ない。

 座光寺でも同じ傾向。

 地下水位が浅く、地下水が流れ・にくいために、大規模開発などによる影響か出やすい。十分な配慮が必要です。

6.井戸の水質

 上郷地区・座光寺地区にも良好な水質の井戸・湧き水がいくつもある。所有者にとっては貴重々財産です。

 実は、私の家では公共水道も入っていますが使っている水はすべて地下水です。

公共水道にはない良さがあり、毎年保健所の検査を受けていて、問題が出なければいつまでも地下水を使うつもりでいます。お金に換算したことはありませんが、我が家にとってはとても使いやすいありかたい水です。

7.大型開発事業の影響

 これまでに多くの事例があり、地下水を扱った書籍で紹介されています。

 それをみると地下水の減少(地下水位の低下)は大きな問題です。

 その工事でどれだけ水が出るか。それにより、どれだけ地下水が減少するか。

 地下水位の低下ど影響が出る範囲を明らかにしておくことが大切。

 21世紀は環境の世紀と言われています。環境問題が起きる前に自治体が十分な環境評価をして事業の可否を判断していくことが望ましいと思います。

連絡先  飯田市高羽町3-4-9  TEL 0265-24-5604
         飯田リニアを考える会(代表 片桐晴夫)


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