掲載日:2017/03/22

改めて問う 「何故リニア中央新幹線を通すのか」

片桐晴夫

 改めて問いたい。「何故リニア中央新幹線を通すのだろうか?」と。「JR東海」は、「リニア中央新幹線」を東京品川から名古屋市、そして、大阪市まで通すと言い、既に工事が始まっている。沿線各地の住民の納得が十分に得られていないのが現状である。一例を長野県の大鹿村に観てみたい。

 「大鹿歌舞伎」などで名の知られているこの村は、南アルプスの西麓に位置し自然豊かな静かな土地で、数年前から東京その他から静けさを求め永住を願ってやって来る人々が増えている。私はこの山村をこれまでに数回訪れ、すっかり魅了されてしまい、友人知人他の人々に、この村の魅力を話してきた。

 しかし、この魅力溢れる村に、「リニア中央新幹線」が通るという事が起こり、実に複雑な思いを抱くようになった。「JR東海」は何故この鉄道を強引に通そうとするのだろうか。国民の何割がこの新鉄道の建設を希望しているのだろうか。これまでに行なわれた大企業の建設企画は、住民の意志を無視して強行されたものが多かったのではないだろうか。この新幹線計画はそれらの中で最も大きなものであり、国土の破壊を伴うものであって、全く必要のないものではないだろうか。国の計画ではなく、一企業の発想によるものであり、十分な討論議論も行なわれずに、少数の人間により強引に推し進められ、マイナスが十分に予想されている。私が初めてこの計画を耳にした時、「この自然豊かな伊那谷に巨大な限石が落下したような大いなる衝撃」を受けたのだった。もし、この鉄道計画が実現されたならば、この土地は大いなる破壊を受け、住民の生活は崩れてしまうという危惧を感じたのだった。

 大鹿村、豊丘村、喬木村、飯田市座光寺、上郷、上飯田、阿智村などは殊に影響を受け住民の生活は大いに破壊されるだろう。一例として、廃土を運ぶダンプカーの通過によるもの、その土を置く場所など、様々なものにより、マイナス面が考えられ、それらについて「JR東海」は明確な展望を持っていない。全く住民を馬鹿にした計画であると言わざるをえない。

 これらに対して、地元の為政者たちはどのように考えているのだろうか。彼らは、「リニア中央新幹線計画」のもたらす全体像がはっきりと見えていないのではないだろうか。私は度々飯田市の関係の方々と話す機会があるが、殆どが「JR東海」の言いなりだという感想を抱かざるをえない。本当に住民の立場に立って、悩み考える姿勢が見えないのだ。

 このままで工事が進められてゆくとどんなことになるだろうか。山梨県の実験線沿線の現状を視察することがあるが、住民からは大いなる不満と憤りの声をいろいろと聞いている。実験線を見学した小学生の感想を聞く機会があったが、或る少年は「通過する時の音が凄かった」などの声があった。

 現在、「リニア中央新幹線工事実施計画認可取消請求事件」が東京地方裁判所に提訴されており、原告側の勝訴を切に願うものである。これは、日本の国土の破壊を防止し、国民の真の幸せを求めるための大切な訴訟である。一企業の横暴企画は何としても食い止めなければならないと心から思うのだ。

(※ 掲載にあたり、難しい漢字を直しました)