飯田リニア通信 更新:2021/08/12、追記 2021/08/20更新:2021/08/27

「虻川の安全を願う会」が「虻川上流リニア残土置き場計画の安全再確認要望書」を提出

 12日、豊丘村の「虻川の安全を願う会」が豊丘村村長に「虻川上流リニア残土置き場計画の安全再確認要望書」を提出しました。要望書は以下の通り。


2021年8月12日

国土交通省大臣 赤羽一嘉 様
長野県知事 阿部守一 様
豊丘村長 下平喜隆 様

虻川の安全を願う会

豊丘村 虻川上流リニア残土置き場計画の安全再確認要望書

 私たちは、長野県下伊那郡豊丘村の天竜川の支流、虻川の安全を願う会です。ずっと将来も虻川が安全で災害にも強い川であるようにと願っています。

 先頃、熱海で豪雨により土石流が発生し上流の盛り土が崩れ、大きな被害となり、死者も大勢出て未だに行方不明の方もおられます。

 当村では、リニア中央新幹線工事のトンネル掘削による残土を、虻川上流の本山や戸中の谷に置く工事が始まっており、熱海のケースと比べて、残土置き場計画の盛り土量が130万㎥+26万㎥。盛り土高が最高50mという規模で、どんな対策を講じるとしても無謀で受け入れ難く、盛り土量及び高さなどの規模と開発面積の見直しが必要と感じざるを得ません。

 私たちの懸念などは具体的に下記のとおりです。これらのことを重視して、虻川上流リニア残土計画の安全性の再確認を行ってください。そして、JR東海の工事や管理の計画に関して、将来にわたり十分に安全が維持されることを第一義に、必要な立法や条例制定や行政指導により、JR東海に計画変更を行わせることを強く要望致します。

1 一般的に建設残土を水みちや谷筋に盛り土をして処分することは災害要因となり不適切。その不適切さを永年に渡って回避するためには、国や県などによる厳格な法の整備や行政指導が求められる。JR東海の虻川上流のリニア残土置き場の工事計画の基準は、既定の十分に整備されていない法律や設計要項の準用であり、いわば計画の許認可のための拠り所としては大変に心細く、安全な工事施工を保証するものとは思えない。この地に住み続ける下流域住民としては全く受け入れがたいもの。(豪雨や地震に対する盛り土の評価基準や安定計算の方法、奥山谷埋め盛り土の高さや量の制限、安全確保の盛り土工法の規則、地質・谷の傾斜や周りの沢の特性判断方法など)  

2 残土置き場の排水施設、滑り防止施設など、盛り土の安全対策として造成工事が計画されているが、部材、設備の経年劣化は避けられない。また、虻川上流の膨大なリニア残土置き場崩壊に備えた砂防堰堤などの施設や非常時の連絡体制などの計画が無い。

3 JR東海が残土置き場の土地を購入し将来にわたり管理するとしているが、コロナ禍における高速交通網の利用価値や長い目で見た社会経済環境などの大きな変化により残土置き場の安全管理も時間の経過するほどに危うくなる。

4 一度切り開かれた山林は山肌が剥き出しになる。長期の工事において、昨今の激甚自然災害への対策も踏まえ、安全で防災機能も十分に機能する工事計画へ見直しが必要。

5 膨大な残土の谷埋め盛り土はやめ、リニア残土を天竜川の堤防の補強工事に回せば、虻川の安全も従来通りに維持できる。(提案)

連絡先 会代表:原 章
住所・電話番号(省略)


2021/08/20 更新

 8月18日に、「虻川の安全を願う会」は上記の「豊丘村 虻川上流リニア残土置き場計画の安全再確認要望書」を国土交通省あてに送付しました。要望書に以下の文書を添付したそうです。


2021年8月18日

国土交通省 大臣     赤羽一嘉 様
  〃   鉄道局施設課環境対策室 様

虻川の安全を願う会 代表 原 章

要望書提出に関わって

 私どもの要望は別紙「豊丘村 虻川上流リニア残土置き場計画の安全再確認要望書」の通りですが、この要望書提出に当たって次のようなことを付け加えさせていただきます。

 長野県下伊那郡豊丘村のリニア中央新幹線建設に伴うトンネル残土を天竜川支流の虻川上流に置く工事が始まっています。残土を置く本山や戸中の谷は、伊那山地を背とする急峻で浸食最前線の「奥山」にあります。しかもこの地域の地質は、大変風化しやすい花崗岩で、昭和36年には猛烈な大雨で至る所の谷から下流に崩れ流れて36災という大災害を引き起こしました。過去を振り返りますと、そういう災害を何度も繰り返している場所です。

 そんな虻川の「山奧」への「大量」の「谷埋め盛り土」となると、大変に危険な要素がいくつも揃ってしまいます。私どもにとりJR東海の虻川上流リニア残土計画は大変に危険な計画で受け入れがたいものです。問題の大きいJR東海の工事計画を長野県はこれまで認めてきてしまっていますが、長野県には建設残土を規制する条例はなく、国にも建設残土の不適正処理を防ぐ法律ができていないために、JR東海は好き勝手に大量の残土を山奧の谷筋に置く工事を始めてしまっています。

 もう少し熱海のことと虻川上流のことを比較して具体的に申しますと、静岡県の盛り土の高さ制限が15mですが、長野県にはそういう基準がないので残土を置く本山の谷では盛り土の高さ(標高差)が120mくらい(一カ所の厚さでは50m)です。熱海では上流に置かれた盛り土のほとんどが崩れ、崩れた盛り土の量は5万4千立方メートルなどと報道されています。それに比べて本山の盛り土量は130万立方メートル、戸中でも26万立方メールと、とても膨大です。

 熱海の盛り土をした業者が不適切な工事をしていたことが報道されています。それに比べてJR東海虻川上流リニア残土計画は一定程度の安全な対策が為されていますが、後のしっかりした管理がずっと永遠に続かないと熱海のずさんな盛り土と同じになってしまいます。しかも本山残土置き場はそこに行く道路がほぼ一本の細い山道です。36災のようなときには、何カ所もの山崩れなどで簡単に近づけず、残土置き場が急な地下水上昇などで危険になっても緊急工事はほぼ不可能だと思います。

 とんでもない高さや異常に大量な盛り土量なので、最悪の事態が起きれば熱海土石流と比べてものすごい大災害になり得ます。ずっと将来も安全で崩壊などが絶対に起こらないように工事が行われ、その後の管理も適正に行われていくためには、厳格な国レベルでの立法や行政指導などが必要不可欠です。長野県が全国一律な基準を基に強く行政指導できる事も重要です。安全面が万全となるように科学的に検討して国の力で適切な立法などを行い、基本的な盛り土の安全基準や決まりを是非とも作成してください。

 その上で、今までのJR東海の虻川上流リニア残土計画を見直させ、必要なところは変更させて、熱海土石流のような災害が我々の住む虻川や他の地域で、これからは絶対に起こらないようにしていただきたいと思います。

 以上のことも要望書とともにしっかりと受け止めていただき、国としてのご対応をどうかよろしくお願いいたします。


2021/08/27 更新

 8月26日に、「虻川の安全を願う会」が上記の「豊丘村 虻川上流リニア残土置き場計画の安全再確認要望書」を長野県飯田合同庁舎(南信州振興局)で長野県に提出しました。

 提出時に短時間ですが質疑が行われ、その中で、長野県でも盛り土の高さ15mという基準があることがわかりました。本山の場合120mにもなるがという問いに、県は超える場合は安定計算をして大丈夫なら認める答えていました。

 提出に同行しました。虻川本流の日向山ダムの計画貯砂量は10万立米。10万立米の10%程度までであれば土石流の流下をダム湖の上流部に堆積させることで阻止できるはずです。虻川流域として、その規模の土石流を想定した治水計画ができているはずなので、支流に盛り土された130万立米の10%が崩壊しても下流域の砂防堰堤の能力を超えます。その対策のためには長野県が費用を出すことになるだろうとの指摘をしておきました。

 治水計画からみて想定外の開発行為(やってもらっては困る開発行為)であるという認識が、長野県の現場職員にはあるはずです。