ストップ・リニア!訴訟ニュース第18号
更新: 2019/11/02
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ストップ・リニア!訴訟ニュース
第18号 2019年10月25日
発行 http://linearstop.wix.com/mysite
ストップ・リニア!訴訟第16回口頭弁論、
大井川減水でJR東海の対策の不備を追及
台風19号が首都圏に迫る中、10月11日、リニア訴訟の第16回口頭弁論が東京地裁で開かれました。
傍聴抽選には108人が並び、16回連続の抽選になりました。
1時15分から地裁前で集会を開き、この日意見陳述を行う関島保雄弁護士と横山聡弁護士が内容を説明し、つづいて川村晃生原告団長や支援団体からの決意表明や激励の挨拶がありました。
2時半からの意見陳述の後、原告側は橋山禮治郎、阿部修治、松島信幸3氏の証人申請を提出しました。
古田重夫裁判長が「3月に原告適格で中間判決」と表明
この日の閉廷前、古田重夫裁判長は、原告側からルートや鉄道施設について正確な提示を求めており、これに被告側が答えてないという状況は認識しているとしたうえで、「来年3月に原告適格について中間判決を出す」と表明しました。原告側は、「被告側からの正確な資料提示が無いまま原告適格性を判断することはできない」として中間判決ではなく最終判決で判断するよう求めました。
裁判後の午後4時から衆議院第二議員会館で報告集会とリニア沿線8地域の代表らからリニア工事の現況について報告がありました。集会には原告やサポーター、報道関係者、国会議員ら80名が参加しました。
次回口頭弁論は12月20日(金)です。
大井川の減水と生態系の確保は困難
関島保雄弁護士の意見陳述あらまし
1 静岡県は、静岡県民の水利権や南アルプスの豊かな生物多様性を確保する為に、客観的科学的立場から、参加人に評価書の科学的な根拠と環境保全対策の適正な措置を求め、その確認ができない限り静岡県内のリニア中央新幹線トンネル工事の着工を認めない立場を維持している。
2 静岡県知事の対応 参加人は評価書において、大井川源流部で毎秒約2立法メートルの水が、リニア中央新幹線トンネル工事により減水すると予測しているが、その科学的根拠は明らかにしていない。
毎秒2立法メートルの減水は、約60万人の生活用水に相当する水量が減水することになる。
静岡県知事は、参加人に対し、大井川水系の減水する全量を大井川に復水しない限り静岡県内での中央新幹線工事には同意しない旨を明言している。
この静岡県知事の対応の基礎になっているのは、大井川の下流域の7市2町が大井川のを利用し利水権があるからである。流域の約62万人が水道用水に利用し、12000ヘクタールの地域が茶畑・水田を中心として農業用水に利用し、その他工業用水、15か所64万kWの発電所の発電用水、約430事業所が井戸により工業用水、水道水として地下水を利用しているから、大井川の減水は認められないのである。
3 参加人(JR東海)の不誠実な対応
参加人は、評価書では、大井川源流部の減水対策として、トンネル内への湧出した地下水には、トンネルが貫通するまでの6~7年間はトンネル内の湧水をポンプで汲み上げて非常口から大井川に戻す計画であるとし、トンネル完成後の恒久対策は、トンネル湧水をポンプアップして大井川に戻すことも一つの選択肢とするという、あいまいで抽象的な対策しか評価書及び補正後評価書で記述していなかった。ポンプアップの具体的な施設やポンプアップの手法、使用する機械の内容や能力、大井川に戻る水の量さえも明らかにしていなかった。
ところが、トンネル内湧水のポンプアップは、静岡県の広域水道企業団の試算では毎秒 0.7立法メートルの水を揚程13メートル揚水する電気代だけで年間1兆7520億円がかかるとすると、毎秒2立法メートルの湧水では年間約5兆円程という途方も無い金額になり、参加人が破産し、負担できる金額ではない。
この為、参加人は、本件認可直後に、ポンプアップ案を導水路案に変更して静岡県に提案したのである。しかし、導水路では約7割程度しか大井川に戻せず、参加人は、戻らない3割相当の毎秒0.7立法メートルのトンネル湧水はポンプアップで大井川水系に戻すと言わざるを得なかった。
しかし、参加人は莫大な電気代が発生し負担しきれないことから、0.7立法メートルの湧水の大井川水系への復水は、必要に応じてポンプアップすると、ポンプアップによる復水を事実上放棄する方向に変更した。
しかし、大井川利水関係協議会は、大井川の湧水の全量復水を要求したため、参加人は、2018年10月17日の静岡県に対する回答書で、「原則として静岡県内に湧出する湧水は全量大井川に流す措置を実施する」と回答せざるを得なかった。その後、標高の高い静岡県のトンネル工事により標高が低い山梨県側及び長野県側に流失することを認めている。
参加人のあいまいで不誠実な対応に対し、静岡県は、トンネル湧水の完全な復水をはかるよう参加人に対策を求めた。
参加人はポンプアップによる全量復水はムリと判断し導水路による大井川への復水計画に改めた。
湧水全量を大井川に戻すにはポンプアップしかないが、巨額な電気代がかかり参加人は到底支払える金額では無い。 トンネル湧水をポンプアップにより大井川に戻すには 、莫大な電気代を参加人が負担しきれないからであると推定できる 。
2019年6月6日、静岡県は大井川水系の水資源確保と自然環境の保全等に関する中間意見書を参加人に送付した。
静岡県はこの中間意見書で、参加人に対し、基本的姿勢を次のように述べて批判している。
「ユネスコエコパークに登録されている南アルプスは、その地質構造が他に類を見ないほど複雑で、生態系も極めて希少且つ貴重であり、工事に伴う生息環境の変化には極めて脆弱である。また南アルプスを源流とする大井川は、静岡県民 62 万人の生活用水や工業用水、発電用水として多岐にわたり利用され 、 河川流量の改善、流量回復に向けた厳しい争いの歴史を有している。
周辺流域関係者の十分な納得を得て工事を行うことが、工事施工の必須条件であり社会的義務である。これまでの参加人の環境影響評価における基本姿勢は、質問事項に直接回答しないことがあるなど、その対応の誠実さを疑わざるを得ない 」 と、参加人の不誠実な対応を非難しているのである。
4 参加人のポンプアップ案の破綻
参加人にとって、静岡県から山梨県に流失するトンネル湧水を防ぎ全量を大井川に戻すには、山梨県側から大井川に戻す新たな導水路を作るか、湧水全量をポンプアップするしかない。ところが、山梨県と静岡県の県境に 畑薙山(はたなぎやま)断層が存在し、トンネルがこの畑薙山断層を横断することになるが、幅約800mの断層は破砕帯があ る。 この 為、山梨県側からの導水路案は畑薙山断層に並行して作ることになり、破砕帯における工事における新たな湧水の静岡側への湧水導水対策は 工学的 に困 難になることが明らかになった。 畑薙山断層の実態について調査をしていたのか疑わしい。
このように、参加人の環境影響評価自体が不十分な調査に基づくものであることが明らかに なった。
以上
横山聡弁護士の求釈明意見陳述のあらまし
これまで原告らは準備書面で いくつもの求釈明を行ってきた。
求釈明の主な内容は大別すると、(1)被告が認可し環境影響評価の対象とした建造物の位置や形状や規模に関するもの、(2)車両走行時に安全性について特に火災と避難時についてどの程度審理しているか,(3)走行時の安全性確保のため、建設ルート自体が安全性確保について、どの程度、どのように検討したか、(4)6000万立法メートルにものぼる発生土の処分場所を確定せず、騒音・振動・景観・排気ガス等について環境影響評価を回避・逸脱していることについて適切な対応ではないのではないか,の4点であった。
そして,釈明事項(1)については、被告は、リニア中央新幹線の建設規模が巨大なので工事認可計画時点では建造物の詳細な工事計画や図面の作成が困難、と回答する。しかし、環境影響評価の問題を問うているのに全幹法の内容を回答しており,かみ合っていない。環境影響評価書を見ても,いかなる建造物を仮定して環境影響評価を行ったのかが全く不明である。実施する事業に関して認可申請手続きの中に当該事業の環境影響評価が要求されている以上、環境法体系に則った「環境影響評価」が充足されることは当然の理である。そして、横断条項に基づいて独立した手続きである環境影響評価が充足されない限り、認可処分手続きは無効と言わざるを得ない。
次に,釈明事項(2)について,運行上の事故に対する乗客の安全性確保について、原告らはこれまで事故発生後に使用する非常口の具体的構造、距離、勾配や避難のための手段の具体的検討、消磁のための具体的手順など、事故が生じた場合の緊急対策などについて釈明を求めた。それは、JR東海の説明では、1編成の列車で最大1000名もの乗客が乗車するのに乗務員が2,3名であり、運転士も乗車していないことから、地震・火災などの緊急事態が生じた場合には乗客の安全が図れるか極めて疑問であり、不安が拭いきれないからである。しかるに被告は、トンネル坑口・立坑斜坑・作業坑から外部に避難する、万一トンネルの途中で停止した場合には新幹線・山梨実験線の経験に立脚して対応方法は明確化しており、実用化に必要な技術や運営方法の確立の見通しが得られている、と主張するのみで、具体的にいかなる経験に立脚してどのような対応方法を取るのか、リニア中央新幹線は、超高速で運行され、殆どが地下であるため、これまでのトンネル内事故対応の基本であった「地上部に出る」「駅に入る」などといった対応は極めて困難と考える。従来と異なる避難対応が必要だが、不要ならばその理由を説得的に説明すべきである。事故時の超電導磁石の消磁システムの稼働など全く新しい問題もあり、超強力な磁場に踏み込まないための安全措置は明らかにされるべきである。乗客となる可能性のあるすべての人が納得のゆく答えを提供すべきである。
さらに釈明事項(3)について,前述のように、被告が本事業を認可した時点でルートは定まっており、「亜炭鉱跡の陥没事故の危険が生じる可能性のある場所」や「多数の活断層を横断して地震による断層変異でのガイドウエイの寸断」等の危険の否定できないルートであることは明らかであったにも拘らず、同ルートで建設することを認可している。従って被告は同認可によるルートの選択について、十分安全性の検討を行っていなければならない。これに対し被告は、亜炭鉱跡の選定について、認可後に施工段階で建設主体のJR東海が工事方法やトンネル設計を検討すると回答している。また、活断層の通過の危険についても、地震への対応方針が確認されガイドウエイで磁力により拘束されているから脱線がないのが基本で、具体的な対応は認可後に建設主体のJR東海が工事方法やトンネル設計を検討するとしている。
そもそも被告の対応は、本件事業はJR東海が独力で実施を宣言して被告に認可を求めた経緯から、ルートもJR東海の定めに従うのみで、責任は全てJR東海にあると考えているような態度である。
さらに求釈明(4)について,原告らを含む本件リニア中央新幹線の沿線周辺の住民にとり、過去にない長期間の大規模な工事が実施されたことはなく、自らの生活に関わることとして「どこに発生土置き場が置かれるか」「発生土運搬のルートはどこか」には強い関心がある。なぜなら、近時風水害も反発し、大量の発生土の置き場が生活空間の近隣に生じた場合に安全性への危惧を有することは当然である。そこで原告らは、随時弁論でも、発生土置き場について早急に明かにするよう求め続けて来た。しかし、被告は原告らの釈明に対し、何ら対応する気配もなく、JR東海に対して指示することもしない。従って、裁判所に対し、被告が以上の釈明に具体的に応じるよう訴訟指揮を求める。
以上
第16回口頭弁論 後の報告集会で各地からリニア工事の実態を報告
第16回口頭弁論終了後午後4時から衆議院第二議員会館で裁判の報告集会と沿線8団体からリニア工事の現況や今後に向けての問題について報告がありました。冒頭、 ストップ・リニア! 訴訟 原告側弁護団の関島保雄共同代表が意見陳述の趣旨と内容を詳しく説明し、裁判長から「来年3月に原告適格の中間判決を出す」という方針については、近く弁護団と訴訟事務局が合同会議を開き対策を協議 すると述べました。
山梨線でリニア車両火災、3人が重軽傷
沿線報告に先立って、10月7日に リニア山梨実験線車両基地で 起きた車両火災事故について、リニア・市民ネット山梨代表の川村晃生さんから報道を含む経緯の報告がありました。以下紹介します。
『最初の報道では事故についてJR東海は発表するかどうかは未定であるなどと、事故を大きく報道されないようにしていた。また、計測器を取り出すために車両内の断路器を切り、その後通電したら火花が散って作業員 3人に燃え移ったとJR東海は8日に山梨県庁で記者会見して明らかにした。
報道各紙も火花が散ったとの表現を使っているが、火花だけで3人が重軽傷(火傷)を負うわけはない。JR東海は事故という小さなものとして伝えようとしている。山梨県に問合わせたが、「15日からのリニアの体験乗車が行われるかどうかをJR東海に聞いている。その他のことはわからない」という無責任な姿勢だった。武蔵野大学の阿部修治さんに尋ねたところ、「リニアにとって電気系統の事故は常に起こりつづける。鎮火に1時間かかったのは相当な事故」と話していた』。
沿線各地からの報告のあらましは以下の通り
愛知:大村愛知県知事の 静岡県への介入発言について、県に申し入れ。県は「静岡県の水供給は重要。科学的な話し合いを」と回答。名城非常口の止水や水分離作業進む。
岐阜:JR東海 が御嵩町で残土の恒久処分を計画。重金属を含む土壌汚染のおそれ。「市と協議中」との回答。町民に対し説明を求める声が上がる。以前住民投票があった。
長野:残土処理場をほとんど確保できず 。 大鹿村の大崩落直下まで盛土する計画も。残土搬出のための斜坑工事も遅延。飯田新駅周辺の地権者が 反発、 収拾の 進展はない。
静岡:畑薙山(はたなぎやま)断層が新たな問題。幅800mの破砕帯で出水多く、先進坑だけで大量の地下水が山梨県側に流れる。 ポンプアップはムリ。JR東海に大井川復水対策は杜撰。
山梨:リニアまんが訴訟」 、甲府地裁が判決を早める動き。裁量権に踏み込んだ判決を求める署名に協力を。騒音規制を自治体に請願。真実報道の動画を Youtube で配信。
相模原:新駅工事について説明会開始。100人程度が出席、車両走行で疑問意見。相原高校跡地のクスノキ保存、市に対策なし。非常口残土で道志川の横浜市水源地に影響。
川崎:東扇島埋立にリニア残土使用で監査請求、市監査委は棄却。再度請求し、裁判も視野。東百合ヶ丘非常口残土は横浜港に運ばれ千葉県に船で搬送。片平で住民立ち退き。
東京:公園の緑 守る集会でリニア問題を取り上げ。大深度地下工事について、大田区 では工事認可を取り消す裁判の動きあり。今後も集会等でリニア問題の周知を図る。
<当面のシンポジウムなどのご案内>
- 11月2 日 日弁連リニアシンポ
- 11月30日~12月1日 日本科学者会議 第20回東京 科学シンポ
- 12月20日 リニア訴訟第17回口頭弁論
- 1月19日 南アルプスシンポジウム 川崎市麻生市民館大会議室