飯田リニア通信 更新:2019/10/12

第16回口頭弁論速報

更新:2019/10/18

 原告団本部事務局から速報が出ました。1~2ページ | 3~4ページ


 10月11日、ストップ・リニア!訴訟の第16回口頭弁論が行われました。台風19号が接近する中でしたが今回も傍聴券は抽選となりました。法廷では、関島弁護士、横山弁護士の意見陳述のあと、裁判長から、原告適格について、次回期日(第17回口頭弁論)のあと、3月頃までに判断をしたいとの発言がありました。弁護団は、認可の適法性の判断と同時で良いのではないかと意見を述べました。

関島弁護士による11日の裁判の解説(裁判後の報告集会):

 2014年から静岡県は環境保全連絡協議会でJR東海と環境影響評価について意見のやり取りを続けている。その経過を見ると、JR東海のアセスは言葉だけで、適正にやります、必要に応じてやります、一生懸命やりますと書いているだけで具体性がない。根拠も示していない。静岡県が現在やっているようなことを、本来はどの沿線の都県でやっておれば、JR東海の各地におけるアセスの杜撰さが露呈したはずだ。現在事後評価をやっている。また、新たに決まってくる残土置場等についても環境調査を行うので、静岡県だけに頼らず、それぞれの問題点をあぶり出して、各県に働きかけ動かして行く必要がある。

 今日は、静岡県の水問題について焦点を絞り意見を述べた。大井川を管理している静岡県には水利権者たちの要求を反映させない限りは工事を認めない。キーポイントはJR東海が主張するポンプアップに係る電気料金の問題。0.7立米の水をポンプアップする場合、1年間に1兆7千億円以上の費用がかかる。アセスの段階でポンプアップで大井川に水を戻すと言ったが、認可後直後の12月には、導水路案がを出しはじめた。先進坑を掘れば水は流出するがそれは許して欲しいというのが現在のJR東海の立場だ。静岡県はそれはダメだと言っている。…

 駅、非常口、変電所などの施設についてどういうものを造るのか、それらが特定できていないので、アセスは完全ではない。横山弁護士は、JR東海は必要な範囲での仮定を行っているのだから、それを示すように要求(求釈明)した。ほかに、安全対策をどう検討したのかについてもきちんとした説明を求めた。

 証人については、橋山禮治郎氏、阿部修治氏、松島信幸氏を本日付けで証人申請した。

 裁判所は、原告適格に限って中間判決をしたい意向を示した。何人かの原告を切り捨てるという意味である。裁判で主張している原告として:全原告が主張しているのは、リニアに安全に乗る権利、南アルプスの豊かな自然を守る権利。その他、ルート上に土地、家、立木を持っていたりする人の所有権、物件に対する権利。騒音、振動、日照など生活環境への被害を受けない権利。があるが、裁判所はどの原告を切り捨てようとしているのか。過去の例では、切られやすいのは、自然を守る権利とか、安全に乗る権利。この2つはかなり厳しい。これらは一般公衆、国民一般の権利としてはあるが、個人個人の権利ではないというのが理由。沖縄のジュゴンを守れという裁判の例。もう一つは、所有権、物件。生活環境については、広範囲にわたる部分もある。12月の弁論のあと中間判決を出されると、かなりのダメージを受けるので、中間判決の必要はなく、最終判決に書けば良いことで、いま出す必要はないと主張した。中間判決をさせない運動に取り組む必要があると思う。12月20日の弁論前に、裁判所交渉も含め、対策が必要と考える。

 この裁判でも一つの山場を向える。短期間でしなくてはならないが、一緒に頑張っていただければと思っている。(事務局より補足:10月22日、13時30分から、新横浜の「オルタナティブ生活館」で弁護団会議を行う。各地の事務局に会議の招請をする。近隣の方で希望者は傍聴可。)

 10月7日に山梨実験線で起きた火災事故について、山梨から報告がありました(配布資料)。

 その後、沿線の各地域からリニアをめぐる状況報告がありました。

などの報告がありました。


長野は次のような報告をしました。持ち時間が少なく、十分に説明できなかったので、原稿とスライドを掲載します。

 長野県内のリニアの工事を巡る全般的なことはお手元に配りました「長野県内のリニア工事の現況」に、それぞれ簡単ですが書いておきました。お読みください。もう一つの印刷物(「あおぞら」2019年9月号外(PDF)・表面 | 裏面)は、中間駅のできる上郷地区の共産党の方たちがつくったものです。リニア効果についてそんなものはアテにならないといっています。また、ある方たちは、長野県のリニア沿線の市町村長や議員さんたちがリニアを見据えてと語ることについて、リニア任せ、あなた任せの地域づくりだと批判しています。最近、飯田市の美術博物館で30周年記念公演をした哲学者の内山節さんは、「新幹線とか、リニア駅に地域づくりを委ねるような発想をしていくと地域はもっと壊れていくと思う」と指摘されました。

 今日は、残土の問題を話します。結論から言えば残土の処分地はありません。長野県内のリニアのトンネル工事で発生する残土の総量は約950万から970万立米です。斜坑とか本坑、掘削を始める場所ごとの内訳はこのようになっています。


現在、もっぱら処分地として埋め立てを行っているのは、大鹿村内釜沢地区の旧荒川荘跡地です。


これが約3万立米。これがその写真。


法面の勾配が随分急です。


崩れると小河内沢をせき止める危険性があります。そして、公共事業への活用という名目のものが、やはり大鹿村内の民俗資料館(ろくべん館)前の嵩上げに5千立米、


村総合グランドの嵩上げ工事に10万立米。


実際に工事が行われているのはこの3つだけで、合計13万5千立米だけです。そのほかに、変電所の造成に14万立米、ガイドウェイ組立ヤードの造成に7万立米などの数字は出ていますが、すべて合わせても約43万立米です。恒久的な処分地としては、旧荒川荘の約3万立米以外には確定した場所はありません。

 JR東海や長野県は残土の処分先は十分あるといっていますが、その中にはすでに候補を取り消した場所が入っていたりと希望的な観測を述べているだけのように思えます。

 JR東海は斜坑付近の適当な谷に残土を埋めて処分したいと思っているようです。しかし、1961年の三六災害を経験した伊那谷の住民は谷埋め残土による土砂災害を心配しています。


2016年には、豊丘村の小園地区では住民の署名活動による抵抗でJR東海が撤回せざるを得ませんでした。


松川町の生田地区では、一つの河川の支流の3つの谷の合計で620万立米という候補地がありました。受け入れを希望したのは上流部の自治会でしたが、下流域の自治会は懸念をしめし、話し合いが行われる中で、30万立米の入る谷以外について候補を取り下げることになってしまいました。残りの30万立米についても下流域の自治会は納得できません。話し合いは進んでいません。ほとんどの候補地にいえることは、残土を置くこと自体は目的ではなく、運搬車を通すために道路改良がおこなわれるというオマケがあるからなのです。

 大鹿村の釜沢地区には2つの斜坑が隣り合わせに計画され、その一つ、除山斜坑は2017年4月から静岡方面に向け掘削を開始、現在本坑の位置までの半分まで達したようです。約300mほどしか離れていない隣の釜沢斜坑は、予定より2年以上遅れて7月からヤードの造成に取りかかりました。


これは10月7日に撮影しました。ヤードは盛土をしてあります。もともとは土地は矢印の高さでした。


青緑がかった土が積んであります。おそらくトンネル残土です。

なぜ隣あわせに斜坑を掘るのかということですが。


この釜沢地区と大鹿村大河原の中心部と結ぶ道路が非常に狭く大型ダンプが多数往来するには適していません。それで、こちらの小渋川斜坑と釜沢斜坑の間のトンネルを早く完成させて残土の搬出ルートに使おうという計画なのです。この釜沢斜坑の工事ヤード、実は当初の計画より面積が少なくなってしまいました。保安林指定解除のための地権者の同意を得られなかった部分があったからと言われています。それで、一部の施設は除山斜坑と共用します。


 これは同じ釜沢地区の三正坊の仮置き場。このように何も覆いをかけずにおかれています。また道路を舗装する代わりに残土を踏み固めた道路もあります。このためか、JR東海の平成30年度環境調査報告書では、除山斜坑付近でアセスメントの予測値の約10倍の粉じんが観測されています。釜沢地区では、このように残土の仮置き場はほとんど満杯の上に使用期限が来年夏に迫っています。小渋川斜坑までのトンネルはそう簡単に掘れませんから、この仮置き場の隣の平坦分も残土の仮置きに使うようです。

 大鹿村外でも残土置場はなかなか見つかりません。そこで大鹿村は、ついにとんでもない場所にまで残土を置こうと考えています。


 それが、この大崩壊地の直下の小渋川の川岸です。


この崩壊地は地元ではアカナギと呼ばれてきました。地理院地図では「鳶ヶ巣」と記載されています。国土交通省は「鳶ヶ巣大崩壊地」と呼んでいます。高低差が550m、面積は30ヘクタールにもなります。


今でも砂防工事が続けられています。拡大した写真には、工事用の自動車が写っています。長野県が設置、実は費用はJR持ちの専門家による第三者委員会もこの計画には驚いたようです。が、結局は大筋で同意したと報道されています。それほどに残土の処分場所はないのです。この崩壊地を大鹿村は「鳶ヶ巣沢」とよび、計画を「環境対策事業」とよんでいます。


以上