ストップ・リニア!訴訟ニュース第16号

更新:2019/06/05

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ストップ・リニア!訴訟 ニュース

第16号 2019年5月30日発行
リニア新幹線沿線住民ネットワーク
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第14回口頭弁論:(その2) 原告の意見陳述

 5月17日(金)14:30より第14回口頭弁論があり、工事実施計画(その2)認可取消訴訟の原告67名のうち、萩原安雄さん(相模原市)・河野正彦さん(山梨県中央市)・大坪勇さん(飯田市)の3名の原告が意見申述しました。 また、新たな取消請求事件について和泉弁護士が、先行する工事実施計画(その1)取消請求事件との併合審理を求める意見陳述を行いました。

 それぞれの陳述要旨は以下のとおりです。

萩原安雄さん

 わが家はリニア新幹線予定ルートから約50m離れた場所にある。予定線から 10m以上離れているため、JR東海からは何の説明もなく無視されたまま工事準備が進んでいる。

 境川―相模川間6kmのトンネルは深度14m~26mであり、地権者との間で区分地上権を設定して契約をする必要がある。当該地質は脆弱でシールドマシンによる掘削工事による地盤沈下の危険性がある。

 用地補償について、①対象敷地を分割、②補償額が時価の15%程度、③損害申し出期間が1年、④地盤沈下の原因調査費用を地権者が負担等問題がある。

河野正彦さん

 わが家はリニア新幹線予定ルートから約20mしか離れていないため騒音や振動等による健康被害が心配である。以下の問題に対しJR東海から納得がいく回答が得られていない。

〇日陰による健康被害、特に農作物の日照被害

〇騒音・振動による健康被害 環境基本法16条①には「55デシベル」基準が謳ってあるが、リニア路線片側400m地点で70~75デシベルが発生している。

〇強磁界・強電磁波による小児白血病の発生リスク

〇地下水の汚染や枯渇による健康被害 土壌凝固剤等で地下水が汚染され、井戸水を利用する飲用水や農業用水への悪影響が心配だ。

大坪勇さん

 自宅は長野県駅予定地の南300m、高架から150mにある。JR東海と飯田市リニア推進室の住民説明会に参加してきたが、トンネル工事残土、トンネル工事による漏水の天竜川への排水、新戸川上流域の防災工事、地域通学路の速やかな恢復、住民生活への工事騒音回避について納得のいく回答は聞けない。その他にも以下の問題がある。

〇測量のための杭打ちに関するJR東海の不誠実な対応

〇長野県駅(飯田市)周辺の過大な整備計画による市財政負担の増大

〇駅整備による移転対象地域の地権者(約120戸)への代替地補償の基準が不明確

〇騒音や電磁波による健康被害への説明が不十分


閉廷後の記者会見。左から河野、萩原、大坪、関島、川村(敬称略)

和泉弁護士による意見陳述

 2019年3月13日に提訴された工事実施計画認可取消請求事件の訴状について意見陳述を行います。

 国交大臣は、2014(平成26)年10月17日に行った本件認可処分(その1)の認可に引き続き、2018(平成30)年3月2日、全幹法9条1項前段に基づき中央新幹線(品川・名古屋間)の工事実施計画(その2)を認可する旨の処分(本件認可処分(その2))を行いました。

 本件認可処分(その1)の違法については、すでに平成28年(行ウ)第211号事件の訴状および準備書面において述べているところですが、その違法は以下で述べるとおり、本件認可処分(その2)にも承継されるものと考えます。

 JR東海は、中央新幹線建設工事について、「土木構造物関係分」に関する工事実施計画(その1)と、「開業関係設備分」に関する工事実施計画(その2)とに分割して申請を行い、被告は、これに対応する形で本件認可処分(その1)と(その2)を行っています。

 全幹法9条1項は、「建設主体は、前条の規定による指示により建設線の建設を行おうとするときは、整備計画に基づいて、路線名、工事の区間、工事方法その他国土交通省令で定める事項を記載した建設線の工事実施計画を作成し、国土交通大臣の認可を受けなければならない。」と規定しています。上記文言からすれば、法は、建設主体が建設を行おうとする新幹線鉄道施設の工事全体に関して一括して工事実施計画を作成することを想定しているというべきです。

 とすれば、本件認可処分(その1)と(その2)は、中央新幹線建設工事の「土木構造物関係分」と「開業関係設備分」という工事全体の一部について、被告の便宜からなんら条文上の根拠が無いにも関わらず、それぞれ分割して作成し申請された工事実施計画に対する認可処分であるところ、本件認可処分(その1)と(その2)は本来的には一体となって一つの認可処分を形成するものといえます。

 したがって、本件認可処分(その1)の違法は、本件認可処分(その2)に承継されます。また、本件認可処分(その2)に独自の違法があれば、これも本件認可処分(その2)の取消原因となります。

 さらに、具体的な違法について簡単に述べます。鉄道事業法違反、環境影響評価法違反については平成28年(行ウ)第211号事件と共通であり、同事件において既に主張してきたところです。加えて、JR東海は、本件認可処分(その2)に際して、新たに環境影響評価を行っていません。中央新幹線工事が環境要素に対する影響は、本件認可処分(その1)が対象とする、橋梁やトンネル、軌道工事等の「土木構造物関係分」の工事のみならず、運行供用によって生じるものも少なくありません。また、実際に本件認可処分(その1)段階で作成された環境影響評価では、工事内容が特定されていないが故に事後アセスによる検討対象とされた事項が多数存在します。とすれば、供用に伴う騒音、振動、微気圧波等、電磁波の人体影響といった環境破壊の可能性のある諸要素については、本件認可処分(その2)の段階で再度環境影響評価を行うべきであり、かかる環境影響評価を行っていないことを看過してなされた本件認可は違法というほかありません。

原告適格についての意見陳述(関島弁護士)

 原告側4名の意見陳述が終わって、裁判長から再度「原告適格」問題が出され、裁判長は「原告適格の判断を先行する」可能性に言及しました。

 これに対し、関島弁護団長や横山弁護士から、“計画路線の詳細や残土置き場が未確定であり、利害関係人の特定ができない現状では原告適格の範囲は決められない”旨の従前からの主張をした。

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衆議院議員会館での報告集会・シンポジウムに120名参加

 口頭弁論は約40分で終了し、今回新たに「その2」の原告になり、法廷で意見陳述をした3名の方と川村、関島、天野さんは記者会見に臨み、その他の傍聴者のほとんどが16:00からの報告集会・シンポジウムに参加しました。

 報告集会では、川村原告団長の挨拶、関島弁護士からの口頭弁論の様子や陳述内容の概略などについて説明がありました。

 また、報告集会に参加した清水忠史衆議院議員(日本共産党)から連帯のアピールと激励の挨拶がありました。

 シンポジウムとして、大深度法の問題点につて東京外環道訴訟の代理人である武内弁護士から、経緯・現状と法の詳細説明がありました。

 最後に、静岡の原告である松谷さんから静岡県の最新状況について説明がありました。

シンポジウム 東京外環道師匠と大深度法 ― 住宅の真下に巨大トンネルはいらない

1 訴訟の概要

 外環道計画は1966年に起こるも沿線住民の反対で1970年に一旦凍結した。 2007年に地下方式で実施決定。

2 大深度法の概要と問題点

2-1 1995年11月に「臨時大深度地下利用調査会」が設置され、98年5月に「答申」がでた。答申の「はじめに」に「大都市地域においては地権者との権利調整に要する期間が総じて長期化するため効率的な事業実施が困難」と述べており、初めから大深度地下の効率的利用を目的とする委員会であることは明らか。


(シンポジウムで「大深度法」について説明する武内弁護士)

2-2 2000年5月、「都市計画法および建築基準法の一部を改正する法律が、国会提出から僅か2ヶ月の審議で成立2-3「大深度地下」の定義は、施行令1条で「地表から40m」と定める。

2-4 対象事業は道路だけでなく鉄道(リニアも含む)やその他電気・ガス・水道などを網羅する。

2-5 安全確保、環境保全など配慮義務を「大深度地下の公共的使用に関する基本方針」(2001年4月閣議決定)に定め、環境保全事項として「地下水位・水圧の低下、地盤沈下等を特に配慮すべき事項といているが・・・・。

2-6 使用認可に土地所有者の同意は不要

2-7 所有者への補償は無い。

3 シールドマシンでのトンネル掘削による地上への影響

4 住宅地地下にトンネルを掘削する危険性

 本事業で想定されている地下拡幅部工事はこれまで施工例はなく、事業者自ら「世界最大級の難工事と言うほど、工法そのものが未確立であり、何が起こるかわからない危険性がある。

講演内容について質問がありましたが、ここでは割愛いたします。

裁判所前での抗議集会に120名参加

 開廷に先立ち、13時15分より30分ほど裁判所前にて、傍聴するために各地から駆けつけた120名ほどの人たちによりリニア建設に対する抗議集会がもたれました。

 川村原告団長の挨拶にはじまり、関島弁護団長、外環道訴訟の原告、JR東海労組委員長、などからアピールがありました。また、静岡県の現況について短い紹介がありました。


(天野事務局長と橋本事務局次長)

 100枚弱の傍聴券配布は、前回同様14時からコンピュータ抽選によって行われ、25脚用意された原告席に座る弁護士や原告代表も含めて110名ほどの参加者が傍聴できました。

編集責任者のコラム

 5月18日朝日新聞朝刊「静岡地方版」に「静岡県が駿河湾と南アルプスの森林・河川の環境の関連性を調べる研究委員会を発足させる」との記事が載 った。駿河湾中央部沿岸の特産品であるサクラエビやシラスの不漁がここ数年 問題となっていて、川勝知事が記者会見の場で、以前“不漁の原因として中部横断道やリニアのトンネル工事との関連”に言及したことがあった。知事が正式に調査委員会を設置することは遅きに失した感もあるが、トンネル工事による富士川・大井川水系の汚染との関連を調査研究することはぜひやってほしい。

 知事は17日の会見で「リニアは水脈を変える工事で川の流れや漁業に影響する。南アルプスにトンネルを掘ろうというのだから、(リニア工事も)視野に入れる」と述べた。この間静岡県では、知事と副知事が主導して「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議」が断続的に開催され、「地質構造・水資源」・「生物多様性」両専門部会ともJR東海の説明に対する疑義・異論をだしている。

 私たち静岡のメンバーは、専門部会の会合への傍聴参加を続けているが、両部会がJR東海の説明を「了解」「納得」に至っていない。当初毎秒2トンとされていた出水量が「最大3トン」に変わったのも、同連絡会議でのやり取りのなかであった。同専門部会での質疑動向を今後ともウオッチしていきたい。 ニュース16号文責:静岡・芳賀)

次回第15回弁論は7月19日(金)14:30~13:15から裁判所前にて集会 , 14:00抽選 東京・神奈川の環境影響評価再反論(陳述)

〇今後の裁判スケジュールは、以下のとおり

第15回 7月19日(金)14:30~
第16回 10月11日(金)14:30~
第17回 12月20日(金)14:30~

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