ストップ・リニア!訴訟ニュース 第14号

更新:2018/12/28

原告・サポーターの皆様ならびに読者の皆様へ

 年末の多忙のなか皆様にはいかがお過ごしのことでしょうか。訴訟ニュースの第14号をお届けします。今回は第12回口頭弁論と法廷の後に行われた講演会の報告です。

 リニア計画については、残土処分地問題や大井川の減水問題に関連して、新聞などもリニア計画の困難さについて、触れるようになってきました。

 中間駅予定地の上郷北条では、飯田市の対応に不満を持つ20数名の移転対象者(本線と周辺整備含む)が自主的に勉強会を続けています。そのうち6名は移転に応じないという意志を固めています。

 最近、ニュースにもある原告適格について確認をしました。飯田下伊那、木曽に在住の原告のほとんどが水の問題など何らかの直接的な被害を受ける可能性があることがわかりました。

 今年は災害の多い年でした。このままリニア建設が進めば近い将来に、三六災害を上回るような災害に見舞われると思います。

 事務局一同、リニアを中止させるため努力を惜しまない決意です。経済がなかなか難しい状況ではありますが、来る新年も多くの皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます(お知らせ)。

 皆さま、よいお年をお迎え下さい。

2018年12月28日

飯田リニアを考える会

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メールアドレス: mail@nolineariida.sakura.ne.jp


ストップ・リニア!訴訟ニュース

第14号 2018年12月15日発行
発行 リニア新幹線沿線住民ネットワーク
http://linearstop.wix.com/mysite

11月30日(金)第12回口頭弁論が開かれる

樽井、和泉両代理人が愛知県と岐阜県における亜炭鉱跡やウラン鉱床をめぐるアセスの違法性を陳述!

 11月30日午後2時30分から東京地裁で、「ストップ・リニア!訴訟」の第12回口頭弁論が開かれ、原告側の樽井直樹代理人、和泉貴士代理人の両名が意見陳述を行いました。穏やかな日差しの中、開廷を前に、地裁前で集会が開かれました。弁護団から今回の意見陳述について説明がなされ、続いて世田谷区在住の方から近況の報告を、JR東海労、日本科学者会議から連帯の挨拶がありました。その後傍聴券を求めて133人が長い列をつくり抽選に臨みました。

 法廷ではまず裁判官による準備書面の確認があったあと、原告側代理人の両名が意見陳述を行い、愛知県と岐阜県における、亜炭鉱跡やウラン鉱床を巡るアセスの違法性を訴えました。続いて横山代理人から、現在原告適格について調査、整理の段階であり、次回の口頭弁論の際には主張したい旨を報告、また次回には、長野、東京、神奈川におけるアセスについて反論したいとの申し出がありました。裁判官はこれを了承し、最後に7月19日(金)が新たな期日に加えられました。そしてこのあたりから立証段階に入るとの予測を述べられました。


山梨沿線からのお知らせ

 山梨県が作成した、利便性のみを描いたまんが冊子を巡って、10名の原告が7月9日に甲府地裁に提訴しました。山梨県知事らに、作成費用約1200万円の返還を求めるものです。10月16日に第1回の口頭弁論が開かれ、原告川村晃生から訴状についての趣旨説明がありました。主な論点は、この冊子の作成および配布は、行政の裁量権を超え、特に学校への配布という行為は教育基本法や学校教育法にも抵触し、違反するという点です。

 これに対して、被告答弁書は、松山市がNHK「坂の上の雲」のテレビドラマの視聴を勧めた観光PR紙の配布が、裁量権の範囲内にあったという松山地裁判決を例証として、正当性を主張、また冊子は単に学校に対して配布を依頼したに過ぎないものであるから、何ら問題はない、と述べています。

 現在これに反論する準備書面を作成中です。次回の口頭弁論は、12月25日(火)の13時15分から甲府地裁において開かれます。

意見陳述抜粋 原告訴訟代理人弁護士 樽井直樹

 本陳述は、被告の準備書面(13)に対する反論です。

 原告らは、準備書面11において、愛知県における環境影響評価について、リニア新幹線の通行が予定されている愛知県春日井市と名古屋市の各市長が表明した意見、及び準備書に対する愛知県知事の意見を踏まえて、これらの意見が指摘した問題点が解消されていないという視点から、問題点と違法性を指摘しました。

 愛知県も、名古屋市も、春日井市も、自治体としてリニア建設に反対している訳ではありません。それどころか、JR東海に協力して事業を推進する立場に立っています。このような自治体においても、環境影響評価という面から見ると、専門家、また環境行政に携わる職員は、JR東海が実施した環境影響評価について問題点を指摘せざるを得なかったのです。

 被告も参加人も、このような関連地方自治体の環境に関する真摯な意見について、「勘案した」とする程度であり、真剣に向き合っていないのです。

 愛知県知事意見は、JR東海に対して計画施設の諸元を示すことを強く求めています。原告は、愛知県知事意見を踏まえて、計画施設の詳細を示すことなく行われた環境アセスについて、未完成なものと評価しました。

 これに対して被告とJR東海は、山岳部トンネルについて「非常口と本線を結ぶトンネルの工事及び存在を考慮して、予測評価している」といった評価書の記載を繰り返しています。

 春日井市の西尾町には、非常口と保守車両基地の建設が予定されています。ところが、本件アセスの準備書段階では、非常口・保守基地と本線を結ぶトンネルの存在について明記されていませんでした。愛知県知事はこの点を指摘したのですが、これに対しJR東海は、評価書段階で「保守基地線トンネル」の記載を補充しました。JR東海が「よりわかりやすい内容にしました」と自画自賛するのは、この程度の記載を追加したことを指すのです。しかも、非常口と本線を結ぶトンネル(斜坑)の位置についてJR東海が明らかにしたのは、昨年の12月になってからです。

 昨年11月の第7回口頭弁論手続きにおいて、準備書面11に関連して、トンネル工事によって発生する残土による土壌汚染の危険性について原告の意見陳述を行いました。

 前回の意見陳述は、春日井市長意見に触れられている「美濃帯」を掘削することによる土壌汚染が環境に排出される危険について、同種事例に基づいて説明したものでした。

 名古屋市長意見も、名駅周辺では汚染土壌が発生することを前提とすることを求めています。名古屋市長がこのような意見を表明したのは、ほかならぬJR東海が行った名古屋駅の開発(JRゲートタワービルの建設)にともなって汚染土壌が発生したからです。今回、甲C-A4号証として提出したものは、JR東海の行った調査です。問題は、JRが、このような調査の結果を認識しているにもかかわらず、ほぼ隣接した地点で行われるリニアの工事に関する環境影響評価において、ゲートタワービルの建設に関する調査結果を活用しようとしていないことです。不都合なデータを無視しようとしているといわざるを得ません。

 愛知県ではリニアは全線地下トンネルを進行し、そのほとんどが大深度地下トンネルとなります。

 国土交通大臣は、本年10月17日、リニア中央新幹線にかかる東京都、神奈川県、愛知県に関する大深度地下使用の認可を行いました。

 愛知県においては、特に春日井市において亜炭鉱跡の地下にトンネルを建設することから、陥没事故の発生などの危険性についての懸念が出されています。JR東海は、大深度地下に関する説明会で、15本のボーリング調査の結果亜炭鉱跡は見つからなかったと説明しています。しかし、現実にトンネル建設予定地周辺で亜炭鉱跡地の陥没事故が発生しているのです。 トンネル建設予定地の上部には亜炭鉱跡が存在しないという想定には無理がありますし、トンネル建設による亜炭鉱跡地への影響が、トンネルの直上部に限られる訳でもありません。亜炭鉱跡が存在する地点にあえて地下トンネルを建設するという計画そのものに無理があるのです。

 リニア新幹線は、大規模な事業です。環境への影響が発生することは避けられません。

 したがって、環境影響について、しっかりとした予測を行い、環境影響を回避、低減する措置をとらなければなりません。JR東海も、国土交通大臣も、このような視点を欠いたまま、漠然とした計画に基づき、環境影響を回避できると判断しています。原告らは、このような環境影響評価を前提とした本件処分が違法であることを改めて強調したいと思います。


関島弁護士が報告集会で当日の議論を説明

意見陳述全文 原告訴訟代理人弁護士 和泉貴士

 原告準備書面20について、とくに岐阜県におけるウラン鉱残土による放射線被害について述べます。

 参加人は第7準備書面7頁において、平成25年改正前の環境影響評価法52条1項は「この法律の規定は放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁、及び土壌の汚染については、適用しない」と規定していること等を理由に、原告らの環境影響法33条1項違反の主張は主張自体失当であると主張しています。

 従来、放射性物質による大気汚染等の環境汚染の防止のための措置は、環境基本法13条により原子力基本法等に委ねて、環境法の規制の対象外でした。しかし、平成23年3月の福島原発事故により、空気中に大量の放射性物質が放出されたのを受け、これを環境影響評価の対象外としていた従来の法制度に対する疑問が提起されることとなりました。

 これを受けて、平成24年度の通常国会で、環境法体系の下で放射性物質による環境汚染の防止のための措置を行うことに方針変更が行われ、原子力規制委員会設置法の附則により環境基本法第13条の規定が削除されました。平成25年6月21日には、「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」が成立し、これに伴い環境影響評価法は、平成25年6月25日に、放射性物質による環境の汚染の防止に係る措置を適用除外とする旨の規定を削除する法改正が行われ公布されました。そして、平成26年6月には改正後の環境影響評価法に基づき事業者が放射性物質に係る環境影響評価を実施するに当たって必要な全事業に共通する「基本的な方針」である「基本的事項」が改正されました。

 このような放射性物質に関する環境影響評価の大幅な改正が行われている中で、中央新幹線の環境影響評価は行われました。参加人は平成23年5月27日に国土交通大臣より全幹法8条に基づき中央新幹線の建設の指示を受け、同年6月に本件事業の環境影響評価の手続きに入り計画段階環境影響評価配慮書を作成し、同年9月に方法書を作成公告し、平成25年9月に準備書を公告し、平成26年4月23日に評価書を国土交通大臣に提出し、平成26年8月に補正後評価書を作成しています。

 つまり、環境影響評価の作成当時、上記環境影響評価法等の改正に関する立法事実は既に存在していたと言えます。このような状態のとき、法改正の施工前であるから環境影響評価の調査対象としなくても良いという対応は許されません。法改正が国会で成立している以上、改正環境影響評価法の施工前であったとしても、この時期に進められた本件事業における環境影響評価の手続きにおいては、放射性物質を環境影響評価の対象として調査を行うべきであり、ウラン鉱残土について評価の対象としていない本件環境影響評価は違法と言わざるを得ません。

アラカン山脈にトンネルを掘る?!! JR東海リニア中央新幹線計画の問題点

講師: 山梨県立大学前学長 伊藤 洋


 山梨大学工学部名誉教授である伊藤洋先生の講演内容を、感想をまじえつつ報告します。

 講演はこのリニア計画を、戦中に今のミャンマーで遂行されたインパール作戦になぞらえ、その無謀さ無責任さを指摘する。

 先ず、造山活動中の南アルプス山脈はメランジェ層(豆腐のような破砕層)の水瓶と言え、その横腹に穴をあけることは無謀の極みだとし、また(審議会ではスピードが最重要視されていたが)2007年の時点でフランスTGVが574.8㎞/hを実現しているのに何故リニアありきなのかと疑問を呈する。(確かに乗客の安全を最優先するなら、経験の浅いリニア新技術をあえて選択する必要はなかったはずだ。)

 次に、人口減少と経済成長率の鈍化により需要は減少していて、さらには既存の新幹線との相互乗り入れができないリニアでは利用者が限られる一方、予定建設コスト5兆円は実際には数倍に膨れ上がるはずで、営業運転が始まってからも保線費用は相当なものになるはずと指摘。したがってコスト面からも高速バス・飛行機との競争に敗れ、JR東海は経営危機に陥る可能性が大きいとする。実際、世界の鉄道では延伸距離を200㎞以内にとどめている。


https://trafficnews.jp/post/47465/

 しかしJR東海は、現地調査を軽視し、また専門家の意見に耳を傾けることはせず、会長とその取り巻きによって暴走中。その無謀な計画遂行の果てに破綻となればその責任は誰がとるのかと問い、インパール作戦の戦後総括と同様、責任の所在はうやむやにされてしまうはずだと断言する。(無謀で無責任なインパール作戦では9万人の兵士が消耗品として駆り出され、 死者は32,000人に上った。その3分の2は作戦中止後の飢餓・溺死・敵軍追走によるとされる。因みに病傷者は4万人。同様に、国の無責任な原子力政策を前提として計画され原発2~3基分のピーク電力が必要となるリニアでは、無責任の上に無責任を重ねた厄介者として、その破綻後は、国やJR東海の責任はうやむやにされたまま、またもや巨額の血税が無駄に投げ捨てられ続けることになるのだろうか。日本の将来は今生きている私たちの肩に重くのしかかっている。) ※ ( )内は報告者の註・感想です。(文責・リニア市民ネット・山梨 森本優)

お知らせ

●「ストップ・リニア!訴訟」の会計年度は毎年6月から次年度の5月となっています。各登録先への会費振り込みをお願いいたします。
また裁判を円滑に維持していく財力確保のため、知人のサポーターへのお誘いなど、ご協力をお願いいたします。 ※ 新たに支援をしていただける方は最寄りの沿線団体までよろしくお願いします(沿線団体の連絡先振込口座番号)。

●原告会費: 次年度以降 1口3,000円 ●サポーター会費: 初年度 1口2,000円 次年度以降 1口1,000円

●団体サポータ会費:初年度1口5,000円 次年度以降 1口3,000円

振込口座番号: 00550-1-102464(ゆう貯銀行)
口座名: シンシュウストップリニアネット
問合せ先:飯田リニアを考える会
メールアドレス: mail@nolineariida.sakura.ne.jp

次回以降の口頭弁論予定

印刷用PDF版(このページで紹介したニュースは、このPDF版からHTMLに変換しました。ご支援要請の部分に説明を追加しています。レイアウトも変えています。PDF版がオリジナルです。)