「リニア・鉄道館」の「出張授業」について

更新:2018/06/15

 JR東海が運営する名古屋の「リニア鉄道館」が超電導リニアに関連して、出張授業を沿線地域の小学校を対象に行うといっています。小学校3年で学ぶ磁石についての範囲の内容だそうです。

 超電導リニアは磁石の同極同士の反発力を利用するものです。子供から見ても直感的にわかりやすい方式です。吸引力を利用としようとしても、吸い付いてしまって隙間ができません。こういう性質の吸引力を活用する方が技術的に高度であることが容易に説明できるはずです。ドイツの開発したトランスラピッドは吸引力をセンサー技術とエレクトロニクスを応用して磁気浮上を実現させたもので、15年も前から営業運転をしています。

 この出張授業について、吸引力を利用する方式もあることを生徒に示してもらうことをお願いする文書を長野県教育委員会と飯田市と下伊那郡内の町村、上伊那郡中川村、木曽郡南木曽町の各教育委員会と小学校に送りました。(PDF版)


           様

JR東海「リニア・鉄道館」の「出張授業」について

 子供たちの教育についての日頃のご尽力につきまして感謝申し上げます。

 JR東海の「リニア鉄道館」が「じしゃくのふしぎをしらべよう、じしゃくが社会をかえる!超電導リニアのしくみ」というタイトルの出張授業を沿線地域の小学校で行うと案内をしております。

 授業内容は、小学校3年が学習する「磁石」に関連するものと説明しています。リニア鉄道館に問い合わせたところ、超電導や超電導物質の性質については、授業内容や実験内容には含まないとのことで、リニアへの言及は磁石の同極同士の反発力の応用という点にとどまると思われます。紹介される模型は電磁誘導で短絡コイルが反発する磁界を生じるというリニアの磁気誘導反発方式の原理に忠実なものであり、科学的に問題点はないとの感触を受けました。

 磁石の異極同士、磁石と鉄の間では吸引力が働きます。磁気浮上式鉄道においては、吸引力を用いるものがあり、すでに15年以上営業運転をしている、ドイツが開発したトランスラピッド(上海リニア)、ほかに名古屋のリニモがあります。常電導方式と言われる方式です。こちらは、隙間(ギャップ)を検知する、電磁石に流す電流を制御するなど、小学生が理解を得るにはやや難しい仕組みで走行します。

 一般には超電導リニアは常電導方式より技術的に優れていると思われているのですが、すでに営業運行をしている常電導方式は検討に値すると思われます。

 トランスラピッドを開発したドイツは1970年代に超電導方式を研究しており、試験コースでの実験もしています。しかし、それらを通じて、超電導方式の交通機関への応用は適切でないとの結論を得て、常電導方式を採用しました。超電導の浮上式鉄道への応用を発案したアメリカにおいても、開発は立ち消え状態です。JR東海と鉄道総合技術研究所のみが実用化に向けた開発を続けているのが実情です。

 小学生の段階では、どちらの技術がより優れているかの比較はできようもありません。JR東海が行う以上は、超電導リニア方式のみが唯一適切な技術との印象を与えるものとなるでしょう。それは、生徒たちに、一種の先入観を与えることになり、今後、様々の科学的な知識を獲得していくうえで妨げとなる可能性もあるでしょう。

 そこで、出張授業を受ける場合には、公教育としての公正の立場に立って、小学校3年では理解できないかもしれないけれど、エレクトロニクスと電磁石を組み合わせても磁気浮上鉄道が可能な事も、生徒たちに示していただきたいと思います。

 なお、ドイツ方式も含め磁気浮上方式鉄道が、総合的にみて鉄のレールと車輪を用いる従来の高速鉄道に代わり得る新しい方式という考えは世界的には過去のものになりつつあることを書き添えたいと思います。

 なお、疑問・質問など、お気軽にお問合せ下さい。

2018年6月15日

飯田リニアを考える会

代表:米山義盛・事務局:春日昌夫

連絡先:399-3103 長野県下伊那郡高森町下市田2974-3 電話0265-35-2191

( mail@nolineariida.sakura.ne.jp )

飯田リニアを考える会・事務局