ストップ・リニア!訴訟 ニュース 第10号

更新:2018/03/07

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ストップ・リニア!訴訟 ニュース

第10号 2018年2月1日発行
発行 リニア新幹線沿線住民ネットワーク
http://linearstop.wix.com/mysite

入札不正・環境破壊のリニア工事は直ちに中止せよ!

大気や土壌汚染など深刻な人権侵害が(1月19日第8回口頭弁論)


150人以上の傍聴希望者が列を

 1月19日午後2時30分から東京地裁で、ストップ・リニア!訴訟の第8回口頭弁論が開かれ、原告の井上八重子さん(東京都品川区在住)、伊藤清美さん(川崎市麻生区在住)の原告2人と、原告側の横山聡代理人が意見陳述しました。地裁には傍聴券を求めて前回と同じ155人が長い列をつくり抽せんに臨みました。これで8回連続の抽せんとなり、100席近い東京地裁の103号法廷の傍聴席は満席となりました。

 口頭弁論終了後午後3時15分過ぎから、司法記者クラブで、原告団の記者会見が行われました。

 会見には弁護団の関島保雄共同代表と横山聡事務局長の弁護士2人、川村晃生原告団長、それに意見陳述した井上さん、伊藤さんの原告2人が出席して、この日の弁論内容について説明しました。記者からは談合問題について質問があり、事件捜査によりメディアの関心の高まりを感じました。

次回口頭弁論は、3月23日(金)14:30~東京地裁です。


(司法記者クラブでの記者会見)

横田一氏がリニア談合で講演(参議院議員会館B107室)

 口頭弁論終了後、参議院議員会館でリニア訴訟報告集会が行われ、口頭弁論の報告や意見陳述者の挨拶などがありました。また、午後4時30分から、「リニア談合の真相に迫る」というテーマでフリージャーナリストの横田一さんが講演し、「東京地検特捜部はリニア談合についてはやる気であり、政治家が介在していると見ている。森友・加計・準強姦・スパコン・リニアの5大疑惑について通常国会で政治問題化する可能性があり、野党が一緒になって追及することを期待している」と述べました。


(東京新聞2017年12月12日付)

井上八重子さんの意見陳述要旨

 私は品川区に居住する井上八重子と申します。

1 原告になろうと思った時のこと

 私は、現在品川区に居住しておりますが、区議会議員としていろいろと住民のお話を聞いてきたなかで、リニア中央新幹線が大深度地下を通るという話を聞き、わが耳を疑いました。

 リニアは「早い」という以外に取柄もなく、電磁波については健康被害が疑われており、本当に安全なシステムなのか、また、このような「世界で初めての運行方法」で、「これから先工事に何年もかかる工事」が環境影響評価法で環境の保全についてきちんと評価できているのか、不安になり原告になったのです。

2それぞれの課題で申し上げます。

(1)まず、洗足池の水涸れの不安についてです。

 リニアのルートを見ますと、大田区では洗足池の端から敷地までわずか100mという極めて近い地下を通ります。

 洗足池は、池の北側に広がる台地部に降った雨が地下に浸透し、清水窪から湧き出ている湧水と、雨水を砕石水路と呼ぶ水路に集め、池の大切な水源となっています。

 池の周辺は緑豊かな地域で、大田区内でも貴重な自然環境を残す地域となっています。そのため、平成元年、東京都から大田区に移管されて以降、池周辺の整備だけでなく、洗足流れと呼ばれる池から流れ出る水路を整備するなど、自然環境の保全に努めてきました。その甲斐あって、洗足池や洗足流れには、カワセミの雛が孵るだけでなく、近年は猛禽類のツミなども見られるようになり、近隣の住民だけでなく、多くの人たちの憩いの場になっています。

 池の水深は2m程度で、立て坑を掘り進めれば、当然帯水層を突き破ることになりますから、池の水がなくなってしまうのではないかと心配です。1967年9月上野の不忍池は地下鉄千代田線の建設工事に伴う土砂崩れで池の底が抜け、約3万トンの水がトンネルに流れ込む事故が起きています。

 同じことが起これば、長い年月をかけて住民が守り育ててきた池とその周辺の環境を壊してしまい、池の底をコンクリートで固めた味気ないプールになってしまいます。

(2)次にヒ素に関する問題です。

 JR東海の評価書には東京都の過去の調査の報告が引用され、トンネル工事予定ルートの場所から環境基準001mg/Lを大幅に超えるヒ素が出ています。 JR東海は、「有害な重金属を含む土壌については別に管理し、捨て場を決める」と言っており、大田区での説明会では「汚染された土壌を洗浄する方法を使用する」と答えましたが、その具体的な方法については明らかにせず、もしも土壌からヒ素を除去するならば、その技術は「水溶性有機薬剤吸着法」として専門誌で報じられているもののまだ研究段階で実用化されていない、と述べる専門家もいます。環境保全の観点からは、掘る前に汚染の発生しないよう方法を採用すべきです。

(3)残土搬出及び交通渋滞です

 品川基点から川崎の等々力までの9.2kmのトンネル工事から排出される残土200万**.すべてが品川の立て坑から排出されることになっており、ピーク時には1日約840台もの車が出入りすることになり、交通渋滞や大気汚染など近隣住民の生活への影響は計り知れません。出入口の直近には品川学園という小中一貫の学校があり、約1200名の児童生徒が在籍しており、排出経路の道路に面して校庭があります。12年間にわたって大型車両が行きかう道路わきの校庭で、子どもたちは授業を強いられ、車の排気ガスによる健康被害が懸念されます。

(4)東雪谷避難口発生土搬出問題です。

 大田の非常口からは、立て坑部分の残土だけ搬出するということですが、それでもピーク時は一時間40台往復で80台が出入りし、残土の行方は未だに不明です。閑静な住宅街の生活道路がダンプの通行で混乱することを大田区のほとんどの住民はまだ知らず、交通渋滞や大気汚染は必至です。住民合意での工事と言うにはほど遠い状態です。従って、そのような東京の被害住民を代表し原告の訴えとして申し述べたものです。

伊藤清美さんの意見陳述要旨

 私は川崎市に住んでおります原告の伊藤清美と申します。リニア新幹線計画は「夢の超特急」どころか、国土の大規模な環境破壊だけでなく、地下深いトンネルを猛スピードで走行するだけに重大事故が発生したら、16輌1000人の乗客の命にかかわる大惨事を招きかねないリスクを内含しており、どの角度から見ても無謀な計画です。それだけでなく私達住民に多大な苦しみと損害を与えるものです。ここに工事計画認可の取り消しを求める意見陳述をさせていただきます。

 私が住む麻生区は市の北端に位置する多摩丘陵地で、まだ緑や田畑が残っている閑静な住宅街です。

 昨年1月14,18日、この住宅街にリニア新幹線の地下トンネルを掘るための立坑(東百合丘非常口=大林組JV施工)掘削の工事説明会がありました。この立坑予定地は市道尻手黒川線に接して北側に位置し、ある民間企業の化学研究所跡地で、地形は尻手黒川道路から約12m高い台地です。この南側には道路に隣接して温水プール施設と資源ごみ処理施設を含むごみ焼却施設があり西側は田園調布学園大学、東側はスーパーいなげやとマンション、北側は戸建住宅です。又この地下には浄水場行きの直径3.5mの埋設導水管があり、更に工事ヤード周辺には川崎記念病院、特養及び有料ホームなどの介護施設、幼稚園、保育園、子供文化センター、少し離れて長沢小・中学校があります。まさに子育て、教育、プール、病院、介護、住宅、スーパーが集中しているところです。

 この立坑工事は高さ12mの高台を道路面まで切土した後、立坑の掘削に入る計画ですが直径39m深さ100mのとてつもない巨大なものです。しかも住宅街で行なうというのは非常識極まりない異常なことと言うほかはありません。

 工事説明会では住民から様々な問題点・危惧が指摘されましたが、JRからは道理ある説明はほとんどありませんでした。この説明会終了をもって「住民の了解を得た」として工事を強行することは許せません。そこで私たちは問題点をまとめて2月1日「申し入れ書」をJR東海に提出すると同時に川崎市及び市議会にも提出しました。

1.発生残土の処分先が未定。工事は延期すべき。
2.研究所跡地なので汚染が心配される。ボーリング調査をすべき。
3.切土・掘削工事に伴う土圧及び水脈変化による地盤沈下や隆起の恐れがあり家屋調査範囲を広げること。
4.工事ヤード前の尻手黒川線は慢性的な交通渋滞があり、通学時・夏休み時の交通事故が懸念されるため、事故対策を。
5.立坑や大深度トンネル周辺の生活環境悪化・不動産価格下落への補償
6.工事車両による交通量増大にともなう大気汚染による健康被害


この麻生区でぜん息患者がここ10~20年で急増している。ぜん息増加の原因は、麻生区での宅地化と道路の建設整備が進むにつれ走行車両が増大し、その排気ガスに含まれる窒素酸化物、浮遊粒子状物質、PM2.5(微小粒子状物質)等によるものです。特に学童のぜん息罹患率は全国平均4%に対し麻生区は3倍の12%(平成22年10月学校保健実態調査)です。


このような状況下でリニア工事が10年間に渡り続けられればぜん息発症の恐れは増大することは明らかです。

 以上のようにリニア新幹線工事は長期に渡り住民の平穏な日常生活を奪い更に財産権の侵害、交通事故の恐れや渋滞、大気汚染による健康被害等様々な苦しみと損害をあたえるものです。これは受忍限度を超え、もはや人権問題です。一私企業が国の認可を盾に工事を強行しております。これを止めるには法による裁きしかありません。私達住民の願いです。

横山聡弁護士の意見陳述要旨

 今回、準備書面14で、東京の区部と川崎市部の被害と環境影響評価について明かにしたので、その概要と、本件環境影響評価及びその問題点について現在の社会状況を踏まえて意見を述べます。

1 区部・市部における問題点

 この地域は極めて人口密度が高く、市街地の概成地として住民への配慮。生活環境の改善・維持が求められる地域です。また、学校・病院・介護施設などの地域の住民生活のための施設も多く、生活環境保全のための配慮が求められる地域であると考えられます。しかし、参加人の環境影響調査は、工事が優先であり、そのために最低の環境保全しか必要でないと考えているというほかありません。大気質の悪化や、交通量の増大の影響をできる限り小さく見せようとする姑息な工夫が垣間見えます。

 最大の問題は、発生土の処理が明らかになっていないにも拘らず、環境影響評価を実施できると開き直っているところでしょう。どこに発生土を処分するのかで、発送土運送車両の運行ルートが決まるので、運送車両による排気ガス・騒音・振動・交通量の変動など地域社会への影響の範囲も量も質も、これが明らかにならなければ評価できないはずです。極めて不十分・不適切な情報の提供でも環境影響評価ができるという参加人のいい加減な対応を安易に受け入れた被告の対応には驚きを通り越して怒りがわきます。

2 被告の安易な認可が現在の社会問題を生む

 今日、参加人の工事を受注したスーパーゼネコンの談合問題が取りざたされています。トンネル工事は「掘ってみないと費用がどの程度かかるかわからない」と言われており、公共工事として追加費用の心配をするようでは工事を受注するのは慎重にならざるを得ないのであり、当初本件工事の受注ができなかったのは当然です。しかし、財投により国が資金提供を行うとなれば、安心して工事の受注ができることになります。しかし、後付けで国が資金提供をするのでは、経営の安定性・工事の採算性・安全性について国会の調査や監視が及ばない状態で工事を認可できることになり、国民・住民への情報提供・国会による工事の監督などが回避・潜脱できることになります。このような工事は極めて不適切であり、一度工事を停止して再度環境影響評価を尽くしているかなどを再確認するべきであると考えます。

3 最後に

 本件工事は、大規模で長期間にわたり、環境への負荷も極めて高いと言わざるを得ません。そのような工事であるにもかかわらず、工事の情報が住民に明らかにされないままで認可が下りており、その問題点が各地で表面化しています。認可時点でこのような問題点が見えていたにもかかわらずなぜ認可できたのか、被告は原告らの疑問に誠実に答える義務があると考えます。納得のゆく説明ができないのであれば、自主的に本件認可を取り消す英断を求めます。