(速報)ストップ・リニア!訴訟・第7回口頭弁論
更新:2017/11/27
11月24日開かれたストップ・リニア!訴訟・第7回口頭弁論の速報です(PDF版)。
春日井で亜炭鉱跡の地盤陥没事故、リニア工事で頻発するおそれ
美濃帯のトンネル掘削で有害物質汚染の土壌排出の可能性大きい
〜満員の傍聴席を背に、口頭弁論で愛知県の原告が意見陳述〜
ストップ・リニア!訴訟第7回口頭弁論報告 2017.11.27(速報)
11月24日午後2時30分から、東京地方裁判所103号法廷で、ストップ・リニア!訴訟の第7回口頭弁論が開かれ、愛知県の川本正彦さん(春日井市在住)、大沼淳一さん(名古屋市在住)の原告二人が、リニア新幹線工事による地盤陥没事故や汚染土壌の排出について、パワーポイントを使いながら意見陳述を行いました。
開廷前の午後1時15分から、地裁前で集会が開かれ、関島保雄弁護団共同代表、川村晃生原告団長が第7回口頭弁論の意義や決意を表明、そして意見陳述をする川本さんと大沼さんが法廷に臨む意気込みを述べました。
今回も100人を超える原告、サポーターや支援団体などの人たちが地裁にかけつけたため、7回連続で傍聴券抽選が行われ、143人が約100枚の傍聴券を求めて長い列をつくりました。
2時半から行われた口頭弁論での2人の原告の意見陳述の要旨は以下の通りです。
川本正彦さんの意見陳述
「これまで亜炭鉱跡の陥没事故35箇所」
春日井の炭鉱は殆んど堅坑で、亜炭鉱に届くまで15mから53m真直ぐに掘り下げ、そこから横に碁盤の目のように掘削された。石炭から石油へのエネルギー転換で、昭和40年代に鉱山は閉鎖された。昭和50年代には陥没事故が起きるようになり、小学校の運動場でも事故があった。これまでに修復された陥没は35カ所も記録されている。2015年3月15日朝には、出川町のちびっこ広場のブランコの根元で、深さ2m、直径5mの陥没が起きた。ここは小学生の集合場所になっていたが、日曜日だったため、小学生は難を逃れることができた。
JR東海は「シールド工法で施工するので地盤沈下は発生しない。地上部の家屋調査は必要無い」として、亜炭鉱跡があるリニアルートの環境影響保全調査を行っていない。2017年8月には首都高速道路横浜北線でシールド工法によるトンネル工事で地盤沈下が起きている。亜炭鉱跡の陥没事故を誘発するのではないかという住民不安は日増しに高まっている。
リニア工事による生活環境への直接的な影響も危惧される。私たちは「深夜3時までの工事はやめてほしい」、「リニア路線3キロ幅の井戸調査をしてほしい」、「環境保全協定を自治体、住民と締結して下さい」など30項目の申し入れをしている。こうした住民の切実な要望に対し、JR東海からは真摯な回答はない。286キロの86%もの長大トンネル工事は自然環境と生活環境を破壊するものであり、私はリニア工事の中止を求める。
閉廷後記者会見する、左から大沼さん、川本さん。川村さん 高木弁護士、樽井弁護士、
大沼淳一さんの意見陳述
「美濃帯を掘削すると土壌汚染の可能性」
私は、1971年に愛知県公害調査センター(後の愛知県環境調査センター)に就職、以来2007年まで36年間にわたって、主として水質汚染に関する調査研究を続けてきた。退職後は日本やアジアの環境汚染問題について、被害住民を支援する立場で環境汚染の調査研究を続けている。この研究の中で美濃帯掘削により発生した天然由来物質による環境汚染事例について述べる。
■犬山市におけるカドミウム汚染
犬山市池野、楽田、羽黒地区においてカドミウム汚染米が見つかった。周辺に工場は無く、汚染原因は丘陵部で操業している採石場と見られた。数度にわたって立入調査をした。水を使って岩石の溶出試験をしたところ、溶出水からカドミウムや鉛などの重金属が検出された。岩石は主として堆積岩であるチャートで、硫酸や重金属を溶出する傾向があることが分かった。
■東海環状自動車道トンネル残土による水質汚染
2003年4月26日、久々利川水系新滝が洞池に放流されたマス・アマゴ約千匹が死んでいるのが見つかった。この時池の水は青白色を呈していた。調査の結果、上流に設置された東海環状自動車道建設残土ストックヤードから強度に酸性をおびた浸出水が久々利川に流出していたことが判明した。3年間にわたって88.7万m3の残土が搬入されていた。ストックヤードの地中で黄鉄鉱と酸素と水の化学反応が起きて硫酸が生成され、周りの重金属を溶かしその水が川から池へと流入した。ストックヤードで稼働している水処理プラントはこれまで2回の事故を起こしている。住民からはストックヤードの残土全量の撤去を要求されているが、国交省はこれに応じず、14年間にわたり放置している。
■超深地層研究所(岐阜県瑞浪市)地下水
地下500mの穴を掘ったところ地下水が吹き出し、環境基準を超えるフッ素とホウ素が含まれていた。この水処理は極めて困難だ。
こうした様々な水質汚染についてJR東海の環境影響評価書にはほとんど記述されていない。工事には細心の注意とモニタリングが必要であるのに。
シンポ 「リニア新幹線〜隠された真実」
左から上岡、徳竹、山下の各氏。 右は進行役の原告団天野事務局長
11月24日の口頭弁論終了後、午後4時30分から衆議院第一議員会館で,訴訟原告団とリニア沿線ネットの共催によるリニア訴訟第2回シンポジウム『リニア新幹線〜隠された真実』が開かれ、130人が参加しました。
シンポジウムにはパネラーとして、環境経済研究所代表・上岡直見さん、環境地盤研究所所長・徳竹真人さん、リニア訴訟弁護団・山下 潤さんの3人が出席し、それぞれの専門分野から見たリニア新幹線の隠された真実について発言しました。
上岡さんは最初の問題提起の中で、「東京〜名古屋が通勤圏になる」というJR東海の「通勤圏形成」について、「東京などへのリニアによる通勤客は現状の0.4%程度の増加にとどまる」と述べ、「JR東海の見積もりは非現実的だ」と指摘しました。
徳竹さんは、数多くの実地調査を踏まえ「南アルプスは毎年4ミリ隆起している。トンネル工事には地下水の異常な出水や山はねなどの難関があり、丁寧な調査と長期のモニタリングが必要だが、JR東海の計画は内容も方法もまやかしだらけだ」と批判。山下弁護士は「これ迄と走行方式が全く違うリニア新幹線を全幹法で認可するのは誤りで、母法である鉄道事業法による審査が必要だ」と強調しました。
(文責=訴訟事務局、写真は赤荻雅巳)