『飯田リニア通信』 更新:2017/09/25
「リニア中央新幹線について考えるつどい」報告
9月24日、飯田市上郷黒田の「いこいの家」で「リニア中央新幹線について考えるつどい」がありました。主催は共産党黒田支部。
前飯田市議の小倉さんの現状報告のあと、大村さんから共産党のリニア問題に対する考え方の説明と地域住民の皆さんにリニアの問題点について話す場合のポイントについての話がありました。
小倉さんの報告
- 9月14日の市議会の井坪議員の質問、リニアは信州の南の玄関口と呼ばれるが、スーパーメガリージョンの地下鉄ともいわれている、この点に矛盾はないか。これに牧野市長は、スーパーメガリージョンは世界一の巨大経済圏になり日本の経済が発展するが、その時に飯田が小さな世界都市というかたちで人を呼び寄せることができれば、飯田にもお金がおちると答えている。これは、アベノミクスの成長戦略と同じように、地方には中央の発展でおこぼれがくるというトリクルダウンの考え方といえる。
- 飯田市は駅周辺整備のためなどリニアへのお金をかける一方で、学校のトイレの洋式化が進んでいない、道路の補修、改修が進まないなど、生活関連の予算が十分でない。リニアへの投資は市の財政をゆがめる。
- 黒田の地下をリニアのトンネルが通過するが、住民の中には知らない人もいるので、知らせることが必要。JR東海は工事が近づいたら説明会を開くといっているが、もっと早く知らせる必要がある。
- 2015年10月に名古屋であった「リニア中央新幹線問題を考えるつどい」(共産党主催)で橋山禮治郎さんが言っている次の言葉は重要だと思う。「日本の方向性を変えるのは、国民一人ひとりの行動です。行動を起こすためには、その前に自分の判断をもたなければなりません。判断をもつためには、その前に正しい理解をしなければならない。一人ひとりが模索して、自分の考えをもち、『どうしたら世の中を変えることができるのか』というところまでいくことによって、ようやく日本は新しい日本になる、そう私は考えています。」
大村さんの話
大村さんのお話の中では、リニアに賛成の人たちは、反対派への反論として、地域の経済をどうするのかと問いかけてくるので、住民の支持を得られる別の地域経済についての考えかたを示す必要があるという点が重要と思いました。自然環境破壊や安全性の問題ももちろん重要なのですが、たしかに、日本や特に地域の産業経済の面についてももっとわかりやすい説明が出来るような工夫が必要だと思いました。わかりやすいレジメを作っていただいたので以下に紹介します(印刷用PDF)。
なお、ほかに『赤旗』2012年5月18日付けに掲載された、共産党のリニア問題についての見解、「リニア新幹線の建設に反対する 東海道新幹線の地震・津波対策、大震災の鉄道復旧こそ 2012年5月17日 日本共産党」と『議会と自治体』(第213号 2016年1月)掲載の「[リニア中央新幹線問題を考えるつどい]の記録」のコピーが資料として配布されました。前者は「リニアにまちづくりの将来をかけていいのか、リニアだのみの活性化はきわめて危険である。」と結んでいます。
リニア中央新幹線計画について考えるつどい
日本共産党学習会(レジメ)
2017・9・24
【学習会の主題】
日本共産党黒田支部は、「リニア問題」を通して、地域の政策づくりを追求していきます。
○2012年5月18日の日本共産党の声明のポイント
「リニア新幹線の建設に反対する一東海道新幹線の地震・津波対策、大震災の鉄道復旧こそ」の中心点は、リニア新幹線建設事業に「大義がない」、「必要性がない」ということ。採算性、自然・環境破壊、安全性、電力浪費など。
≪資料≫①上記声明、②16年10月「つどい」記録の抜粋、③その他
【第一の問題提起】
○日本共産党の政策と、市民運動のめざす方向が接近してきています。
大会決定等で解明している、自民党政治の特質である「二つの異常」に対する正面からの批判が、市民の中に広がっています。「日本共産党を除く」という「壁」の崩壊。
・戦争法「安保法制」撤廃 ー 安保条約の廃棄(安保条約・自衛隊に対する見方)
・原発再稼働反対(安全基準の遵守、避難計画の整備)-「原発ゼロの日本」へ
・消費税10%引き上げ反対 - 「消費税にたよらない別の道」財源提案
【第二の問題提起】
○共産党の政策の重要ポイントは、地域社会の活力を向上させ、地方の経済を実際に好循環に持っていけるのは、どっちの政策か、という問題です。
大会決定での経済政策の中心点(民主主義革命)は、闘いの争点として、第一「税金の集め方の改革」、第二「税金の使い方の改革」、第三の「働き方の改革」、そして、第四として「産業構造の改革」をあげています。自民党政治のままでは、解決しない問題です。
「第二」の中に「軍拡や大型開発中心の予算にメスを入れ、社会保障、教育、子育て支援など格差と貧困の是正につながる予算を増やす。」となっていて、この「大型開発」の代表例の一つが[リニア新幹線計画]です。
「第四」では、「鉄道の地方路線の廃止が地域経済の衰退と疲弊をさらに加速している」「リニア新幹線建設を中止し、……」の指摘があります。「第四」の表題は、「産業構造の改革丿大都市と中小企業、大都市と地方などの格差是正」です。
ここが自民党政治との対決点です。
【第三の問題提起】
○日本共産党の、リニア政策、また1960年代からの地域開発問題等での政策活動の発展に、興味のある方は、是非、参考文献をお読みください。(裏面)
裏面
≪27回党大会決定「抜粋」≫ 2017年1月
第四 産業構造の改革 ― 「大企業と中小企業、大都市と地方などの格差是正」
大企業と中小企業では、労働者の賃金に大きな格差がある。事業所規模で見ても、中規模事業所(従業員30~99人)で大企業の6割、小規模事業所では5割程度となっている。
大企業と地方との格差拡大、地方経済の疲弊も深刻であり、日本社会と経済の大問題になっている。農業では、2000年代に入ってから、総生産額がマイナス7.3%、農業所得はマイナスと17.3%と、生産が減り、それをけるかに上回る規模で所得が減っている。地域経済を支えている中小企業、農林水産業の困難と衰退は、輸送、商業、加工などの関連産業の苦境にもつながり、地域経済の衰退に拍車をかけている。
ーー中小企業を「日本経済の根幹」に位置づけ、中小企業の商品開発、……
ーー農産物の価格保障・所得補償を抜本的に強化し、安心して再生産できる……
ーー地域振興策を「呼び込み」型から、地域にある産業や企業など今ある地域の力を支援し、伸ばす、「内発」型に転換する。公共事業を大型開発から、地域循環・生活密着型に転換する。再生可能エネルギー開発に本格的に取り組む。
ーー鉄道の地方路線の廃止が地域経済の衰退と疲弊をさらに加速している。その一方で、リニア新幹線には、採算性も環境破壊の影響もまともに検討されないままに、9兆円もの巨額が投資されようとし、政府もJR東海に3兆円の財政投融資を用意した。リニア新幹線建設を中止し、国が鉄道をはじめ地方公共交通を確保するために責任を果たすことを求める。
ーー最低賃金の地域間格差を是正し、全国一律最低賃金制を確立する。
≪共産党雑誌・著作≫
- 『議会と自治体』2016年1月号「リニア中央新幹線問題を考えるつどい」の記録
- 『前衛』2017年9月号「鉄道のあり方を考えるシンポジウム」上岡直見/本村伸子
- 『前衛』2017年4月号
- 「国鉄分割民営化から三十年を検証する-JRは国民の足に帰ったか」高瀬康正
- 『前衛』2017年1月号「リニアに3兆円の公金投入やめよ」本村伸子
- 『前衛』2016年11月号「異端のリニア中央新幹線は必要ない」橋山循治郎
- 『前衛』2014年12月号「リニア中央新幹線一着工強行は許されない」辰巳孝太郎
- 不破哲三 新版「政策活動入門」2014年↓2月 新日本出版社
≪その他雑誌・著作≫
- 『日本の科学者』2016年9月号
- どうなる?リニア中央新幹線-その必要性、採算性、安全匪を科学の目で考える
- 『日本の科学者』20↓4年10月号 超伝導磁気浮上式「リニア新幹線」の徹底解剖
- ¬文明論、基礎技術、環境保全、経済などの視点から
- 橋山纒治郎 「リニア新幹線 巨大プロジェクトの真実」 2 0 14. 4年3月 集英社新書
後半の討論では、飯田のリニア駅の利用者数の予測が6800人といわれていることについて、それがなぜ過大と言えるのか、どうしたらわかりやすく説明できるのだろうかという問題があがりました。現状のバス利用客数の約1500からみて4倍以上、地元のバス会社経営者も疑問を呈する数字なのですが…。これは、リニア反対の立場の地域経済についての見解とも関連する問題だとおもいます。漠然と、おかしな数字と思っている人は多数います。しかし、飯田市の説明は、JR東海、長野県、飯田市の推定がどれも同じだからというくらいのことで、その推定が具体的にどのように計算されたのかというところを、市民に分かりやすく説明しようという姿勢がありません。担当の職員がそういう経済推計について知識や理解がないのかもしれません。判りやすいエピソード、たとえばそういう推計について、沿線の全ての駅を合計すると、1日に運べる最大の乗客数を越えてしまうというような話(これはちょっと問題ありと思いますが…)を工夫するとかいろいろでましたが、結局は、まずは、どこが分からないのか明確にすることが肝心と言えます。
たまたま、24日は、上郷の「まちづくり委員会」主催の「上郷地域を知る会」が午前中ありました。それに参加した方の報告もありました。催しは、リニアの工事が行われる予定の場所を見学して、まちづくり委員会の役員や市職員の説明を受けるというもの。途中で北条地区のまちづくり委員長が市職員の知識のなさに激怒するなどの場面もありさんざんなものだったようです。この催しについては、見学のあとで懇親会(飲み会)をするということもあり、回覧文書をみた北条の人たちの中には、かんかんに怒ってしまった方もいたようです。
「上郷地域を知る会」で配布された資料は「リニア中央新幹線開業に伴う経済効果」という副題が示す通り、リニアの良い面だけを列挙したもので、北条のリニア建設の犠牲となる方々の心情を逆なでするようなものでした。駅の西端から黒田斜坑までの間のトンネルの工法の変更によって、トンネル残土も北条から出すことで、トンネルの工事までに、国道までの間の住宅、事業所の移転を完了しなくてはならないはずで、掘削開始を平成30年、つまり来年とJR東海はいっていますが、移転先もなく、補償額の提示もなく、移転対象者には具体的な話の進展がまったくない状況で、「ひとごとながら心配になる(本当はJR東海が心配すべきことことだけれど気になる)」という北条住民の発言もありました。夏休みにフィールドワークをした明治大学の学生たちが、飯田市はもっと「強引にやった方がよい」といったほど。もちろん、この学生の発言については反対ですが、おそらくリニアを進める側から見ても、計画は遅々として進まないという実感があると思います。伊那谷全体を見ても、トンネル残土の置場が確定していないなど、リニア計画にもともと無理があるのは明らかといえます。
リニア計画のなかで、トンネルの直径など具体的な数字を含む、わかりやすく要点をまとめた資料も必要だと思いました。
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