『飯田リニア通信』 更新:2017/09/12

 9月8日に行われたストップ・リニア!訴訟の第6回口頭弁論の速報が訴訟事務局より届きましたので HTML版を紹介します。(⇒ PDFファイル)。また、リニア・市民ネット・ブログ(9月9日)にも傍聴報告があります。


リニアの南アルプストンネルの工事で大井川が減水、
源流部の残土処分で県北の自然環境に致命的ダメージ
~ 静岡の原告2名と代理人が工事中止を訴える ~

ストップ・リニア!訴訟第6回口頭弁論(速報)2017.9.11

傍聴券求め前回上回る173人が並ぶ

 9月8日(金)午後2時半から、ストップ・リニア!訴訟第6回口頭弁論が東京地裁103号法廷で行われ、静岡県の服部 隆さん、林 克さんの原告2名と、原告代理人で静岡市の西ヶ谷知成弁護士が静岡県北部のリニアトンネル工事の県民生活や自然への影響について意見陳述しました。


 口頭弁論に先だって、午後1時すぎから地裁前で集会が行われ、弁護団の関島保雄共同代表や川村晃生原告団長のほか、当日意見陳述を控えた西ヶ谷弁護士、林さんそれに服部さんらが挨拶や決意を述べました。

 午後2時から行われた傍聴券の抽選には、前回(163人)を上回る173人が並びました。

 法廷での意見陳述はパワーポイントを駆使して行われました。最初に立って意見を述べた西ヶ谷弁護士は、「そもそも大自然の南アルプスにトンネルを貫通させて新幹線を通そうとする前代未聞の計画自体が重大な問題を多発させる根源であり、その計画自体に無理がある」として次のように訴え、工事認可処分の撤回を求めました。

 「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川という江戸時代の馬子唄にうたわれているように、大井川は推量が豊富な川として有名だった。この豊富な大井川の水が、周辺地域の工業や観光業の発展に寄与してきた。下流域63万人が生活用水として利用し、あるいは農業用水としても直接利用されてきた。

 静岡県の最北部、大井川源流部に11キロのリニアトンネルの掘削が予定されている。この工事による最大の問題は毎秒2トンという大井川の減水である。近年、大井川では取水制限が毎年のように行われている。今年も6月19日から52日間も、生活用水5%、工業業用水・農業用水10%の取水制限が行われ、その影響は8市1町にも及んだ。降水量が少なくダムの貯水量が70%まで低下したことが原因だった。

 リニア工事は大井川の減水に拍車をかけることになるが、工事認可の際に具体的な減水対策が決定されることはなかった。JR東海は工事認可後、導水路トンネルを新たにつくって、工事によってトンネル内から出る水をポンプでくみ上げ椹(さわら)島まで送水し大井川に戻す計画を発表した。しかし、これによってもすべての量を回復できないことは、JR東海自身も認めている。この計画実施による環境影響について工事認可においては全く考慮されていない。このような環境影響評価を経ない大規模な工事が容認されてしまえば、環境影響評価法に基づく規制は全く無意味なものとなってしまう。

 静岡におけるリニア工事現場周辺は、ユネスコのエコパークの移行地域に指定された南アルプス南麓に位置しており、ヤマトイワナなどの多くの希少動物の生息が確認されている。JR東海は、こうした希少生物への工事の影響を減らそうという努力をせず、影響が出たら希少動物を移植するなどといった事後対応を考えているだけである。

 さらに、工事認可後に、大井川源流部の燕(つばくろ)沢に発生土置き場をつくると発表されたが、この計画についても環境影響評価は行われていない。また 工事現場には700人の作業員の宿舎が設けられるが、10年間にわたるそこからの生活排水の影響も調べていない。

 先日大井川の支流に調査に行って、清流を悠然と泳ぐイワナの群れを目撃した。この素晴らしい清流を次世代に引き継ぎたいという思いを強くした。

 裁判官にも是非この自然を直接見ていただきたい。

 リニア工事認可処分の撤回を求める。」(あらまし)

大井川源流部やその支流に水は戻らない

 続いて、原告の服部隆さんが以下のように意見を述べました。服部さんは登山家で、足しげく南アルプスに足を運んでいますが、標高2,400mの山中でツキノワグマの糞を見つけ、改めてリニア工事から貴重な自然を守らなければという思いを強くしました。「静岡県から山梨県にかけて大井川源流部には多くの支流が毛細血管のように存在する。二軒小屋から椹島まで導水路トンネルで水を戻すということは、椹島から上流域の沢では減水や水枯れが起きるおそれがある。これは、南アルプス南部のユネスコ・エコパークの核心地域の喪失を意味する。

 JR東海は環境アセス書で『周辺に生息地域と同等の環境が広く分布してお り生息環境は保全され、工事の影響は小さい』と記述しているが、そんな単純な話ではない。減水はトンネル周辺のすべての谷に及ぶ。また保全措置として重要種は移植すると言うが、重要種と非重要種と仕分けすること自体、厳しい自然条件の中で生きる命への敬意など微塵もなく、心の震えが止まらない。

 私たちは、南アルプスを公有財産として未来へ引き継ぐ責任を持っている。『上流部の谷に水を戻せないのなら、工事は中止して下さい』、これが南アルスの生き物と私たち登山者の思いだ。」(あらまし)

燕沢の残土置き場は崩落とダム化のおそれ

 三番目の意見陳述に立った原告の林さんは、大井川上流部で至る所に沢の両岸の石が崩れていることを指摘し、燕沢の河岸に高さ65m、長さ700mのリニア残土を積み上げることは、対岸が崩れれば川をせき止めダムが出来て、そこにたまった水が下流の椹島を襲うおそれがあるとして、大量の残土を排出するリニア工事の中止を求めました。以下林さんの陳述です。

 「私は、リニアが通過する現場である南アルプスの燕沢や西俣周辺を3回にわたり調査した。

 リニアの静岡県ない10.7kmはすべてトンネルで、その工事による発生土処理は大きな課題だ。370万トンの発生土のほとんどは燕沢に集中する。その付近は千枚岳直下からの千枚崩れと言われる大量の礫(れき)が堆積した平坦地であり、そこに高さ65m、長さ700mの規模で発生土を積み上げたらどうなるのか。もし、対岸が崩れればダムが出来てしまい、渇水期には下流の水が不足し、大雨の際はダムが決壊し水が濁流となって下流の椹島を襲うおそれがある。

 燕沢周辺には日本列島の生息域としては南限となる絶滅危惧Ⅱ種(環境省レッドリスト)のオオイチモンジ蝶が分布している。その幼虫は、大井川上流部の流れに沿って自生しているドロノキを食糧にしている。発生土置き場が崩れてドロノキが流出したら、希少種の生息に影響する。リニア新幹線建設は、静岡市民の財産である自然と安全を壊すものであり、到底認められない。」(あらまし)


 午後4時から参議院議員会館講堂で報告集会が開かれ126人が参加しました。初めに、意見陳述した西ヶ谷弁護士から改めてその再現が行われました。そのあと関島弁護団共同代表の報告や服部さん、林さんの発言などがあり、国会議員の福島みずほさん、本村伸子さん、畑野君枝さんから連帯の挨拶がありました。

次回口頭弁論は11月24日、愛知県の原告が意見陳述予定、裁判後第2回リニアシンポ

 次回裁判は11月24日(金)です。当日は午後4時から2回目のリニアシンポを開催する予定です。