本山の希少種移植 県知事がJR社長に環境保全で要請

更新:2017/06/01

 JR東海が4月21日に本山生産森林組合の山林内の残土置場予定地の沢で行った希少植物の移植作業は環境保全の観点から極めて不当な行為であると思います。JR東海も長野県環境部も違法性はないとの見解を示しています。この残土置場予定地については、地権者である本山生産森林組合は残土受け入れの承認を取り消しました。4月21日の時点においては確実に残土置き場として利用できるか否か確定していなかったのですから、違法でないにしても、環境保全を尊重するなら、JR東海は移植を行うべきでなかったし、長野県環境部は使用が確定するまでは移植をしないよう事前に指導する必要があったといえます。

 長野県知事と副知事に県民ホットラインを通じて以下の意見を提出しました。5月30日に回答が来ました。新聞報道はありませんでしたが、5月26日のJR東海の柘植社長と阿部長野県知事の会談の中で、この件を取り上げたとのことです。この希少種の移植作業が不適切であったことを長野県が認めたといえます。


阿部守一長野県知事様

 はじめまして。飯田リニアを考える会で事務局を務めております春日と申します。県知事様には御多忙中のところですが、これより申し上げることをぜひ真摯にお受け止めくださいますようお願い申し上げます。

 4月21日のことでした。リニア新幹線の伊那山地トンネルの主に豊丘村の坂島斜坑口から出される残土を置く予定地である、本山生産森林組合の山林内のジンガ洞でJR東海の要請により復建エンジニアリングの社員2名が希少植物の移植作業を行いました。この事実はJR東海も認めており、県の環境政策課、林務課も認識があるはずです。

 「長野県環境影響評価技術指針マニュアル【平成28年1月13日時点】」の第2章の各論の「11.植物」には、「移植は他の手法を採用できない場合にやむを得ず実施する代償による環境保全措置であり、安易に移植に頼らないよう配慮する」と書かれております。また環境影響評価法の第1条は「事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保」するように、また第3条では、「国、地方公共団体、事業者及び国民は・・・環境の保全についての配慮が適正になされるようにそれぞれの立場で努めなければならない」とされております。

 本山の予定地は水源涵養保安林です。残土の埋めて工事を行うには保安林指定解除が必要です。しかし、4月21日時点においてJR東海は保安林指定解除の申請をしていませんでした。したがって4月21日時点では本当に残土を置くことができるか確定していなかったわけです。わたしたち一般県民としてみれば、不確実性の高い移植作業は、残土置場としての使用が確実に確定した時期以降に行われるべきものと思います。

 県からのJR東海に対する指導は、わたしたちが確認できたものとしては、確かなものとしては、保安林内の作業について許可がいる案件か否か事前に相談がなされなかった点についてのことだけであって、環境政策課から環境保全の観点からJR東海に明確な指導なり注意なりが行われたか否か、環境政策課の説明では納得いくものがありませんでした。

 私たちは4月21日のJR東海の移植作業は環境保全という点からみてきわめて不当、不適切なものと思います。環境政策課には抗議がかなり来ているとのことです。県知事様には、5月26日にJR東海の柘植社長と会談されるご予定と聞いておりますが、この件についてもJR東海に対して明確に注意していただきたいと思います。是非ともお願いいたします。

2017年5月23日

飯田リニアを考える会・事務局

春日昌夫 (住所等省略 ⇒ 連絡先 )

この意見について以下の回答がありました。

春日昌夫様

 長野県環境部長の関 昇一郎、長野県建設部リニア整備推進局長の水間 武樹と申します。

 「県民ホットライン」にお寄せいただきましたJR東海の豊丘村内発生土置き場(本山)での移植作業に関するご意見についてお答えいたします。

 豊丘村内発生土置き場(本山)において、JR東海が希少植物の移植作業を実施していたことについて、環境保全の観点から、ご懸念・ご心配を抱いていらっしゃると受け止めさせていただきました。

JR東海が実施した今回の移植作業については、環境影響評価法上、違法性のある行為ではありませんが、環境への負荷をできる限り低減させる観点から、その時期は慎重に検討する必要があると考えます。

このため、県では、これまでJR東海に対し、環境影響評価法の趣旨を踏まえ、事業者として環境への配慮を適切に実施するとともに、作業工程や内容等について住民に丁寧な説明を行うよう求めてまいりました。

また、いただいたご意見にもありましたように、5月26日のJR東海の柘植社長との懇談におきましても、知事から本件を具体例として挙げた上で、環境負荷の低減対策も含め、地元自治体等とも常に情報を共有するとともに、住民に誤解を与えることのないよう、より一層丁寧な説明を行うよう強く求めたところであります。

以上、ご意見への回答とさせていただきますが、ご不明な点がございましたら、環境保全に関する内容につきましては、環境政策課長:鈴木英昭、担当者:是永剛(電話:026-235-7163、E-mail kankyo@pref.nagano.lg.jp)まで、工事に関する内容につきましては、リニア整備推進局次長:遠山明、担当者:宮島 俊(電話:026-235-7016、E-mail linear-kyoku@pref.nagano.lg.jp)まで、ご連絡くださいますようお願い申し上げます。

なお、本件について、5月22日付けで、WEBサイトを通じて中島副知事あてのメールもいただいておりますが、本回答は当該メールへの回答も兼ねさせていただくことをご了承願います。

平成29年(2017年)5月30日

長野県環境部長 関昇一郎

長野県建設部リニア整備推進局長 水間武樹