JR東海の希少種移植のその後
更新: 2017/05/16、2017/05/17 修正
不当だけれど違法ではない ⇒ ニュースにならない
JR東海は4月21日にトンネル残土置場予定地の本山生産森林組合の山林の谷で希少植物を移植のために採取しました。JR東海は保安林指定解除の申請もしておらず残土が置けると確定した段階ではありませんでした。JR東海は、保安林内で相談なく作業をしたということで県の林務課から指導を受けました。
JR東海にこの件について電話で聞いてみました。JR東海の見解としては:
- (1) 4月21日の作業はもともと行政機関と協議の必要のないもの
- (2) 作業自体も2月に県に提出した「環境の調査及びに影響検討の結果について」に記載しており、その後県からの助言を含めて実施した
- (3) 作業自体は法令上は問題ないことではあるけれど、県林務課のほうからは保安林内で作業をする場合は軽微なものでも事前に相談をしてほしいということを言われた
環境部自然保護課に聞いてみましたが、環境評価書に計画として移植があれば、違法ではないということでした。そこで、評価書などで種類を公表しないことは法律で決まっているのかと聞きました。種類の公表をしないのは配慮であって条文にはないとの答えでした。
では、工事が確実にできる段階になる前は移植をしないという配慮もあって良いはず
4月21日の段階でJR東海は保安林指定解除の申請をしていませんでした。まして、「地権者の承認」自体が怪しいものになっている現状です。JR東海は、住民になるべく情報を出さない「配慮」はしても、自然環境に対する「配慮」はないといえます。
今回のJR東海の作業は明らかに「不当」なものですが「違法」ではないという非常におかしなことがまかり通っているのです。
なお、南信州地域振興局(飯田合庁)の林務課の治山第1係によると、保安林内で行おうとするいろいろな作業については、この作業は許可がいるとかいらないとかの決まりがあって、作業をしようとするときは事前に作業の内容を具体的に林務部に説明して、許可がいるものかいらないものなのか相談をして確認を受けることになっているそうです。4月21日のことについては、相談はなくJR東海の判断でやったことなので、相談をするように指導したということで、JR東海は説明に来たとのことでした。ただし、事後ですからまずいですね。
環境部環境政策課に再度聞いてみました。事後ではあるけれど、環境部としては、移植については保安林指定の解除申請が行われる前まではできないよという話はしたということです。なお、環境部環境政策課によれば、林務課も保安林指定解除の申請が出されて計画地が確定されてからでなければ移植作業はダメだという指導はしたようです。つまり、長野県としては林務部、環境部も事後ではあるけれどJR東海に指導をしたというわけです。
県知事はJR東海の環境調査について助言をだしています。本来ならそこで、確実に候補地が使えることが確定するまでは移植はしないようにといっておくべきだったと思います。なにせ相手がJR東海なのですから。
JR東海が環境影響評価法の目的をきちんと受け止めておれば今回のような拙速はしなかったはずです。JR東海の環境保全に対する基本姿勢が問われるところです。
たまたま、わたしたちが目撃したのでわかったのですが、なかなか住民の目の届きにくい場所ですから、あの谷で、残土の埋め方についても計画どおりきちんとやるか心配です。まして、残土の投棄がはじめれば、現場へ近づくことは難しくなります。
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参考
環境影響評価法(平成九年六月十三日法律第八十一号) から
第一条 この法律は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることにかんがみ、環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする。
第三条 国、地方公共団体、事業者及び国民は、事業の実施前における環境影響評価の重要性を深く認識して、この法律の規定による環境影響評価その他の手続が適切かつ円滑に行われ、事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し、又は低減することその他の環境の保全についての配慮が適正になされるようにそれぞれの立場で努めなければならない。