平成28年(行ウ)第211号 工事実施計画認可工事取消請求事件
原告 川村晃生 外737名
被告 国(処分行政庁 国土交通大臣)
参加人 東海旅客鉄道株式会社
2017(平成29)年4月28日
東京地方裁判所 民事第3部 B②係 御中
弁護士 小笠原忠彦 山梨県内の中央新幹線の特色について述べます。 山梨県内での中央新幹線における被害状況として最も特徴的なことは、すでに山梨実験線が建設され、走行実験が行われており、被害が現実化していることです。また、山梨県内の本線部分は他の都府県の走行部分と異なり、地上部分が多く、高架線で通過すること、それも住宅地を含めた甲府盆地南部を長距離高架施設で横断していくことです。すなわち、品川・名古屋間全長け286㎞であるが、地上走行はそのうちわずか14%の40㎞にすぎません。他方で、山梨県内の地上走行はそのうち27㎞であり、品川・名古屋間の地上走行部分の67.5%を占めています。その上、甲府盆地の地上走行区間の大半が住居地域です。さらに、特色としては南アルプスを貫通するトンネルの坑口があることです。 山梨実験線は1990(平成2)年に実験線建設地として選定され、参加人は、同年11月28日に建設に着工し、予定区間け42.8㎞で、先行区間として18.4㎞が建設されました。その後、2008(平成20)年5月に延長工事が
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のような山岳地域の遠方から甲府市まで運ぶ場合の発生土の搬送経路、車両台数も明らかにされていません。未だに150万m3の発生土の処分地が決まっていない状態で、発生土処分の環境影響評価が行われたとは言えません。
騒音被害について述べます。
山梨実験線は、走行実験であり、わずか4両編成の車両であり、走行本数も少ないものです。しかし、そんな実験線でさえトンネル区間以外の防音防災フードのない部分では、「窓を開けていると、騒音で電話の会話が途切れる」、「床下から持ち上がるような感覚だ」との騒音被害による苦情や批判が寄せられています。今後、本線が大阪まで開通し芝際には、片側で1時間に10本、16両編成の車両が通過し、すれ違い走行もあるので、山梨実験線での騒音被害をけるかに超える被害が確実に発生します。
本線については山梨県内の甲府盆地を高架施設で通過することから、騒音による環境影響評価については、問題点が多いといえます。山梨県内で「新幹線鉄道騒音に係わる環境基準」である住居地域の上限70dBを超える地域は甲府市上曽根町、中央市極楽寺、富士川町天神中條など6か所あります。この6か所の住宅地を相当距離にわたって、75~79dBの騒音予測が示されているのは、参加人が、防音防災フードを設置せず、単に防音壁しか設置しないためです。
これらの国の環境基準を超える騒音は心身の健康にも影響を与え、社会的な問題となる。中央新幹線運行供用時における6時から24時まで、6分間隔て、75ないし79dBの騒音に苦しめられる状況は、「生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持することが望ましいとされている環境基準」を満たしていません。現在、中央新幹線沿線地域には、在宅で介護や医療を必要とする高齢者が増えています。中央新幹線の地上走行は連日、早朝から就寝後まで高齢者の安眠を妨害し、在宅要介護者の生活を破壊します。
山梨県内の被害として橋脚による被害も予想されます。
中央新幹線が通過し、山梨県駅建設が予定され、長距離の高架施設ができる甲府
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盆地南部は、西側の釜無川と東側の笛吹川に挟まれ、それが合流して富士川となる地域であり、過去にも多くの洪水に見舞われた地域です。従って、この地域は、深い堆積地層であり、地盤が弱く、予想される東海地言に際しては、山梨県内で最も強い震度が予想され、液状化の危険度が高い地域です。現に、関東大震災の折には、山梨県内でも特に大きな揺れや被害が観測されていました。このように甲府盆地南部の中央新幹線の沿線は、地震による安全性への懸念が強い地域です。
また、この地域は、釜無川と笛吹川の伏流水による地下水に恵まれた地域であることから、地下水の利用が多く、水道水源、農業、工業に多くの地下水が使用され、地下水の汲み上げ(ポンプアップ)により、20年間で6~7cmの地盤沈下が続いている。
こうした地域に高さ20mから40mの高架施設が建設されるのである。この付近の安定した地盤は地下30m付近にあり、本来そこまで掘り下げなければ橋脚の安全陛は確保されないにもかかわらず、掘削工事の深度は5mとされています。これは甲府盆地の浅層帯水層を地下20m~30mと想定し、それへの影響を避けるためと思われますが、これでは橋脚の安全性は明らかに確保されません。参加人は地質状況により、基礎杭を施工する場合があるといいますが、その程度の対策で地震などの危険性を除去するができるとは考えられません。
甲府市南部や中央市おいては、井戸が水源になっており、豊かな井戸水が市の水道水源になっている。甲府盆地南部は、深い堆積地層であり、高架橋を維持するためには深い基礎が必要であるとされている。そのため、基礎を深くしなければならないが、その場合、水源となっている地下水が汚染される危険率水脈の切断で水源自体が枯れる危険があります。
景観被害について述べます。甲府盆地南部を通過する中央新幹線は、地上を高架で走行するという特徴かあり、他のトンネル走行地域と異なり、甲府盆地南部の景観は中央新幹線の高架施設により、一変します。しかし、これまで景観がどのように変わるのか、具体的なイメージを示した説明はありませんでした。また、環境影
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響評価においても、景観の改善が、中央新幹線を建設することを前提に改善案が示されていて、その内容も改善からはほど遠いものです。そして、景観のイメージについては、遠方から撮影した写真に加工したイメージで現実的な被害が認識できないもの、イメージのみで、現在の写真がなく対比できないものなど、建設後の十分な景観のイメージが示されているとは言えません。例えば、甲府市大津町の山梨県駅建設予定地には、山梨大学医学部付属病院を目安として、高さを点線で示しているに過ぎません。少なくとも駅を含めた予測写真を提示しなければ、景観についての影響の程度を把握することは不可能です。
以上
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