平成28年(行ウ)第211号 工事実施計画認可工事取消請求事件

原告 川村晃生 外
被告 国(処分行政庁 国土交通大臣)
参加人 東海旅客鉄道株式会社

意 見 陳 述 書

2017(平成29)年4月28日

東京地方裁判所 民事第3部 B②係 御中

原告 平川一星

 原告の平川一星です。私は平成25(2013)年12月にUターン転居しました。甲府市上曽根町で平穏な生活を送ることを考えておりました。新居に転居する3ヶ月前に、リニア中央新幹線ルートは発表されました。

 私は、既設の実験線のほぼ真下にある家屋を見て、居住者を気の毒に思っていました。緩衝地帯が無い実態に驚きもしました。ところが我が家も中央新幹線による影響を同じように受けることになりました。我が家の裏手を40mの高さの高架橋が通過します。

 山梨県甲府盆地の地上走行から発生する問題を中心に意見陳述をします。

 リニア中央新幹線の地上走行に伴う問題は多岐にわたります。大勢に及ぼす被害は「騒音」でしょう。沿線住民が被る被害は「振動」「低周波音」「電磁波」「日照」「土地売却後の残地」「不動産価値の低下」等です。JR東海も自治体も中央新幹線をバラ色に描きますが、最近沿線住民はただ被害を被るだけと冷めた目で見ています。

1.騒音被害の状況について

 リニア中央新幹線の品川・名古屋開全長は286km、地上走行はそのうち14%の40kmです。山梨県はそのうち27kmです。甲府盆地は地上走行による被害が大きく、大半が住居地域でもあります。

 「新幹線鉄道騒音に係わる環境基準」は住居地域の上限を70dBとしています。超える地域は


6力所あり、7kmの防音壁の区間です。その騒音は75~79dBです。御坂町竹居はガイドウェイ中心から60m地点で79dB、富士川町天神中條は30mで78dB、甲府市上曽根町は60mで77dBです。

 私の住む甲府市上曽根町には、513戸1,375人が住んでいます。上曽根町は「集落の区域」です。上曽根町の中央新幹線の路線区間は約1.5kmで、上曽根町の真ん中を東西に横断し、町は分断されます。中道北小学校や柏保育園そして児童館は、もちろん「保全施設」であり、より一層騒音を抑えることが必要ですが、73dB以上の騒音になります。

 二の基準、70dB超える騒音は心身の健康にも影響を与え、社会的な問題となります。6時から24時まで6分間隔て75~79dBの騒音に苦しめられます。新幹線騒音環境基準は「生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持することが望ましい」としていますが、リニア中央新幹線はこの騒音基準を全くないがしろにしています。現在でも、地域には、在宅で介護や医療を必要とする高齢者が増えています。リニア中央新幹線の地上走行は連日、早朝や就寝後まで安眠を妨害し、在宅介護者の生活を破壊します。

2.JR東海の対応

 昨年は自治会単位でJR東海の住民説明会が頻繁に開催されました。住民の質問に対するJR東海は「国の基準に基づいて公平に補償します」とか「総合的な対策を講じます」とか具体性に乏しい回答のみです。畑地が路線にかかる人の「いつまで作付けが出来るんですか。」という質問に、JR東海は、「出来れば来年は止めてほしい」と回答しました。今年トウモロコシの作付けをしなかったら、50万、100万単位の損失になるのです。それにもかかわらず、補償の話は何も ありません。

 私も質問しました。「活断層の上の沢筋に残土を埋めて、大きな地震の時は大丈夫なのですか。」と。これに対しては、JR東海と一緒に来た工事業者が答えました。「活断層はどこにでもあります。国土地理院が調査を進めていますから、今後そこら中に活断層は見つかるでしょう。」無責任者わまりない二の答えには驚きました。その後県の職員がフォローして答えました。「決められた方法で埋めましたので大丈夫です」と。何が大丈夫なのか、全く理解できませんでした。(私は、その方法について問い返しましたが、納得出来る説明はありませんでした)

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 補償に関する質問は多いのですが、「国の定めた基準に基づき補償します」と答えますので、多くの人は、「補償してくれる」と思ってそれ以上の突っ込んだ質問をする人は少ないのです。私か「実験線での実績はどうですか。」と補償について質問すると、JR東海は「今資料がありませんから正確なお答えは出来ません」と、およそ誠実に対応するつもりが無い答えを返してきました。

 私は事業説明会でも質問しました。外国の例を挙げて、「ドイツは当時300mの緩衝地帯を設け、中国でも緩衝地帯・安全地帯を設けている」と、JR東海の考えを問いただしました。その質問に対する答えは「国それぞれの考えがありますから」でした。なぜ、前例を参照して適切な対応をしないのか理解に苦しみます。

 私も含め、複数人で(私の地元自治会は)騒音低減のために緩衝地帯を要求しました。JR東海は、「22m幅の用地取得をもって認可を受けております」との回答をしました。13mのトンネル幅で22mの用地では、緩衝帯とは言えず騒音低減はないも同然です。(22mの外側に緩衝地帯をもうける計画もないし国の認可も緩衝地帯を想定していないということです。)許可した国も計画したJR東海も貧相な考え方です。

 住民説明会の会場で出される騒音に対する不安に対して、JR東海の回答は「必要に応じて、土地利用対策や個別家屋対策を含めて、総合的な対策を講じます」でした。音源対策で対応出来るのに曖昧な答えしかしないのです。

3.環境影響評価について

 環境影響評価法が定める「事後調査」について、実施しないことは不適切な対応です。そもそも、環境影響評価手続き内で対応しかいこと自体問題ですが、それに加えて、事後調査も行わないことは言語道断です。騒音による甚大な被害が想定されるのに、事後調査すら実施しないのでは住民の理解は得られません。環境影響評価書データと走行実測データの突き合わせは必須要件です。環境影響評価自体でしっかり調査しかいばかりでなく、事後調査すら省くことには到底納得できません。

 環境影響評価書の騒音データが不十分です。高架橋の高さ40mの場合の騒音値はいくつですか。どこまで騒音が届くのですか。軌道中心から25m以内のデータもありません。25m以内に家屋は何軒もあります。

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 低周波音の影響も受けます。障子、襖が共鳴して音を立てます。対策をJR東海に問いただしましたが回答はありませんでした。未解明のままです。

 このような不明確な記載や実際に生じている被害からも、環境影響評価自体がきちんと行われていないことは明らかです。事後調査に任せてしまうのもおかしいですが、その事後調査もやらないことは許せません。

4.山梨県知事に対する要請書を提出

 平成29(2017)年4月4日、甲府市上曽根町5つの自治会は総会の決議を経て、住民全員の総意を持って騒音対策を山梨県とJR東海に要望しました。

 平成26(2016)年8月に出された環境影響評価書に対する山梨県知事の「観光振興の観点等から走行するリニア車両を一定の区間見えるようにしてほしい」との意見書によって、当初の計画であった防音・防災フードから防音壁への計画変更をJR東海が受け入れたのです。上曽根町を含む4㎞の区間は防音壁での建設となったわけです。生活が壊される周辺住民の意見は聞かず、観光目的のみのためには計画変更するなんて信じられません。

 最後になりますが、この間の体験から、全てが住民の理解の無い中で進んでいるという気持ちを禁じ得ません。国会審議もなく、国民の知らないところで進むリニア中央新幹線計画。実験線沿線の自然破壊・生活破壊を知るにつけ、地上走行から発生する問題を考えるにつけ、環境負荷が大きすぎる計画だと言わざるをえません。願うことは自然を壊さないでほしい、静かな生活を奪わないでほしいとそれだけです。自然環境、生活環境にかかる負荷が大きすぎます。 JR東海はリニア計画から撤退する覚悟をすべきです。国交省は認可を取り消すべきです。

意見陳述を終わります。

以上

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