リニア新幹線計画に反対し、
着工の中止を求める共同アピ-ル

 2011年5月12日、国土交通省交通政策審議会は、20回にわたる形ばかりの中央新幹線小委員会での検討を経て、リニア中央新幹線計画が妥当との答申を国土交通大臣に提出しました。同年5月12日は、3.11東日本大震災と福島原発事故の直後で、国民は混乱と動揺の最中でした。政府もその対応に追われていた時に、なぜリニア計画実施のゴー・サインが出されたのか、その理由は不明です。整備新幹線という国家プロジェクトでありながら、民間のJR東海が建設費を自己負担するということから、国会では丁寧な審議が行われず、また環境影響評価も不十分なまま実施に向けた手続きが強行されました。

 最も根本的な問題は、一見丁寧さを重んじるように装いながら、自然環境への影響や残土処理、安全対策など本質的な問題には答えず、「大丈夫です、安心して下さい」と繰り返すJR東海の対応でした。それが最も端的に表れたのが事業説明会です。具体的な対策が示されず、質問が限られ、再質問も時間も制限されるという異常な進行で、参加した多くの住民は、国やJR東海に不信感を抱きました。

 積み残された問題は、一つにリニア新幹線が在来型新幹線の3~4倍の膨大な電力を消費すること、一つに南アルプスなどのトンネルエ事により、地下水・河川水の枯渇や減少をもたらすこと、一つに事業者自身が認める「採算がとれない」事業によって財政上のツケが残されることなどです。更には、事故時のリスク、磁界測定データの不透明さ、中間駅ができる地元自治体及び住民の財政負担や不利益、自然景観や歴史景観の破壊などが指摘されます。

 山梨県と長野県に跨る南アルプスは、3干メートル級の山並みが連なり、神々しいまでの偉容を誇っています。また、山麓や地下に豊富な水を貯え、豊かで多様な生態系を育んでいます。ユネスコのエコパークに登録されたのも、該地が貴重な自然の宝庫であるからにほかなりません。そこにトンネルを掘り、工事残土を山中に放置しようというのです。これまでで最大の自然破壊行為です。

 いったいこれ以上「速く」する必要があるのでしょうか。また、経済成長神話を信じて、同じ過ちを繰り返し続けるのでしょうか。

私たちは、このように自然を破壊し住民を軽視する リニア新幹線計画に反対し、着工の中止を求めます。

2015年9月20日

リニア新幹線沿線住民ネットワーク
共同代表:天野捷一、川村晃生、片桐晴夫、原重雄

私たちもこのアピールに賛同します

(五十音順、敬称略)
阿部修治(武蔵野大学教授)/池内 了(名古屋大学名誉教授)/池辺晋一郎(作曲家)/糸魚川淳二(名古屋大字名誉教授)大河原雅子(前参議院議員)/荻野晃也(・磯波環境研究所長)/鎌田慧(ルポライター)/窪島誠一郎(「無言館」館主、作家)小済泰昭(東北大学名誉教授)/斎藤貴男(ジャーナリスト)/早乙女勝元(作家)/佐高 信(評論家)/澤地久枝(作家)柴田鉄治(ジャーナリスト)/竹本幸造(静岡県勤労者山岳連盟理事長)/寺西俊一(一橋大学名誉敦授)/富山和子(立正大学名誉教授)中村敦夫(俳優・作家)/橋山禮治郎(干葉商科大学大学院客員教授)/広瀬隆(著述業)/本多勝一(元朝日新聞・編集委員)宮本憲一(大阪市立大学名誉教授)/武藤類子(ハイロアクション福島)/森山まり子(日本熊森協会会長)/山田洋次(映画監督)

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